\5/3 えーたん お誕生日おめでとうございます!!(遅くなってごめんなさい! こそこそ)/



 名前を呼ばれた。同じ名前の大きい自分を呼ぶときとは違い眉間にしわがよっていない。優しい声をしているのは名前をひらがなで認識しているからかな、と小さい臨也は窓の桟に立って外を歩く人間を見ていた。なぁに、しずちゃん。角砂糖ならまだあるけどくれるならほしいな。目を細めて振り返ると、ちげぇよ、と手を差し出された。登ったのはいいけど桟から降りられなくなってしまったのだ。静雄がそれはちょっと期待外れかもしれねぇな、と照れたように落ち込んだようにはにかんだので、いざやはあれに似ている、と思った。そんなときの静雄はそれまでは振っていた尾をしゅんと下げてそれでも立派でいようとする犬みたいだ。いざやにとって本物の犬は食べられてしまいそうで思い出すだけで鳥肌が立つけれど、静雄はそうではなかった。頭をなでてあげたくなる、名前を呼んで毛をわしゃわしゃしたくなる、そんな存在。

「なになに? どうしたの?」
「服ができた」

 短く答えた静雄が嬉しそうなのでそれを見上げていたいざやも嬉しくなってきた。静雄がいざやの服を作っているのはサイズが合うものがないからということもあるが、それに面白みを感じたからだ。いざやは服を作っている静雄がとても生き生きしているのを知っているから余計胸の辺りがぽかぽかしてくる。体が小さくて自分では何もできないし猫に食べられそうになるしで迷惑ばかりかけているのに自分にも直接的ではないが何か与えることができたのか、という発見がそのたびにいざやにあたたかい感情をもたらすのだ。大きい自分が小さい静雄を連れて服を頼みにくることもある。臨也に会うのは嫌だけれどしずおには会いたいし、なにより静雄が服を作ることに関してはとても楽しそうで、その様子を見ているだけで他のことなんてどうでもよくなってしまう。

「いざや、手ぇあげろよ」

 テーブルに立たせられ静雄の言うとおりに手をあげるとゆっくりと服を引き上げられた。壊さないように気を使ってくれているというのがこすれる服より少しだけ体に触れる静雄の指より何よりくすぐったい。そして何より、どきどき、している。服を作ってもらって脱がされるのはもう二十一回目のはずなのにまだ緊張するなんて。今日はどんな服なのかな。いざやは手を握ってみる。この拳と同じくらいの大きさの心臓が自分の中にもあって、静雄に服を着せてもらうたびに早く全身に血を送らなければと慌てる。指の先まで熱を帯びて。それは裸を見られているからでも新しい服が楽しみだからでも静雄の笑顔が見れるからでもあるけれど、すべていざやが静雄を思っているからだ。鼓動の音が大きければ静雄に気持ちが伝わるのなら少しだけ人間になりたいと思う。しかし人間でも相手に鼓動が聞こえるわけではない。だからいざやは言葉や動作で伝えたいのだ。大きい自分にはいつになったらそれがわかることやら。


アッチェレランド


20100605



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