(団兵と虎三)(成長)






あるところにとっても馬鹿で馬鹿でとんでもなく馬鹿な男が居ました。

その救いようのない馬鹿は、本当にどうしようもない馬鹿で、最低なことばかりしていました。たとえばどんなことだって?それは僕の口からはとてもとても。下品すぎて口にしたくもないので割合します。さてその馬鹿は特に女の子が大好きでした。女の子、というより、その先にある性行為が、とても大好きでした。街の女の子に手を出したまくるその姿に、そして必ず最後はその女の子たちを泣かせる馬鹿に、普段は温厚なお父さんも流石に堪忍袋の尾が切れ、いい加減にしろよ?と笑顔で怒りました。お母さんも箒を両手に激怒しました。それでもその馬鹿は改心なんてしません。どうしようもありません。でも、僕はそれでもよかったのです。僕にさえ迷惑がかからなければ馬鹿がどうしようと、僕はどうでもよかったのです。


でもついに大馬鹿野郎は、してはならないことをしました。


「さて、その馬鹿旦那はなにをしたでしょう団蔵くん?」
「心当たりがありすぎてわからないけど、とりあえず今生死の境にいることはわかるかな!」
「どうして心当たりがあるのかなあ?僕はある馬鹿野郎の話をしてるんだよ?」
「三ちゃんったら意地が悪い!」
「てめえに言われたくねえよ馬鹿旦那」

三冶郎は語尾にハートマークをつけて可愛く首を傾げるが、青褪めた団蔵の顔は戻ることはなかった。三冶郎の背後には生物委員会が飼育している狼や毒虫、そして手には天井からぶら下がった紐の数々。おまけに団蔵が居る場所は三冶郎と兵太夫の部屋である。
廊下を歩いていたら突然目の前が真っ暗になり(多分気絶させられたのだろう)、目を覚ましたら恐怖のカラクリコンビの自室だ。扉の前の廊下には笑顔の三冶郎。どう考えても嫌な予感しかしない。
一歩でも歩けばどうなるかわからない部屋で団蔵は首を傾げる。ここまで三冶郎を怒らせることをしただろうか。三冶郎は可愛い系で好みではある顔だが、一番の友人である虎若と交際をしている。手を出したことなどないはずだ。知らず知らずのうちに三冶郎のお菓子でも食べてしまったのだろうか。ううん、わからない。いくら考えても三冶郎をここまで怒らせた原因が出てこなかった。

「俺三冶郎に手ぇ出したっけ?」
「気持ち悪いこと言わないでくれるかな」
「だよねえ。じゃあなに?俺なんかした?」
「数刻前、君は教室で誰となにをしていましたか」
「ん?教室?……ああ、うたた寝してた兵ちゃんが可愛くてちゅーした」

あっけらかんと言ってのける団蔵に三冶郎は微笑みを深くした。認めたね?低い声で問うてきた三冶郎に団蔵は更に青褪め、素直にはいと頷いた。
頷く団蔵に三冶郎は手をパンパンと二度叩き、野郎共!と声を上げた。その瞬間どこに隠れていたのか、廊下の天井から孫次郎と一平が降りてきた。遅れて扉の端から虎若が顔を出す。生物委員会総出である。

「で、えええええええ!!!!???なに、なに!!!??」
「ねえねえさんじろー、ほんとに毒虫さんの実験に使っていいの?」
「いいよ、存分にやっちゃって孫次郎」
「ごめんね加藤、逆らえなくて…だから狼たちがどこまで死なない程度に攻撃できるか試させてね」
「謝ってない!それ謝ってないからいっぺーちゃん!」
「団蔵…」
「と、虎若…!」

申し訳なさそうに眉を下げる虎若に団蔵は手を伸ばす。だがそんな団蔵に虎若は手を片手を上げ、死刑宣告を口にした。

「日頃の行いが大事って事を教えてもらえ」
「ちょっ、虎ちゃんマジで!?え、助けてくんないの!?」
「これに関しては庄左ヱ門と伊助も公認だし。無理。逆らえないです」
「うそお」
「かとーは血の気が多いからねえ、毒虫さんたちはいい仕事してくれそうだよ」
「狼さん、殺しちゃ駄目だからね。半殺しだからね」
「二人ともやっちゃえー!」
「骨は拾ってやるからな」



マジで殺す5秒前

馬鹿旦那如きが僕の兵ちゃんに手ぇ出すなんて千年早いんだよ、生まれ変わって出なおしてきな!











ちなみに生物委員長は三冶郎です。
委員長は絶対。でも実験したかったからラッキーな孫次郎と一平ちゃん。

透徹/110122