「俺の事情と彼の事情」

それはツナが正式にボンゴレのボスに就任したばかりの事だった。
ボンゴレ内部の全ての人間たちが、このおよそボスらしからぬ容貌の子供に魅入られ、協力的であった。彼の笑顔には人々を和ませ、手を差し伸べたくなるような魅力があったのだ。
しかしその中でただ独り、組織に溶け込まないものがいた。
雲の守護者である。
決してボンゴレに、ツナに、悪意を抱いているわけでも、反抗している訳でもない。
しかし組織の中での孤高の存在というものは、ある意味非常に扱いにくい・・・特に新米であるその上司にとっては、組織の存続さえ彼の行動一つにかかってしまうような、危険な存在となってしまうのだ。

ツナは、周りに協力をしようとせず勝手な行動ばかり取る雲雀に業を煮やし、ある日彼を自室に呼び出した。
「ひばりさんが強いのも独りで行動できるのも知ってますけど・・・。でもこっちとしては、凄く困るんです!勝手な行動は控えてもらわないと!」
おそらく出会ったばかりの中学生のツナならば、決して言えない台詞だろう。
しかし今のツナはいろいろと経験をさせられ、少しばかり強くなっていた。
しかし対する雲雀も、あの頃よりもさらに、これでもかと言う位ふてぶてしくなっていた。
一言「ヤダ」で話を終わらせようとした雲雀に腹を立てたツナは、立ち上がり、
「なら、勝負しましょう!俺が勝ったら、組織のやり方に従ってもらいます!」

勝負はいわゆる「飲み比べ」。
気持ちは戦闘体制に入っていた雲雀は、少し残念そうな顔を見せたが、珍しく素直にそれを受けた。
ダメツナに唯一与えられた特性「ザル」を活かし、自信満々に挑んだ勝負は、結局雲雀の勝利に終わった。
ぐでんぐでんに酔って動けないツナの耳元で、
「じゃあ、勝利者は・・・何を、もらおうかな?」
と囁く。

翌朝ツナが目を覚ますと、隣には横になって頬杖を付き、晴れやかな顔で自分を見つめている雲雀がいた。
「う・・・うおおおお!?」
思わず飛び起き、その拍子にベッドから落ちて「いてえ・・・」と頭をかかえるツナ。
その様子に呆れたように、雲雀は追い討ちをかける。
「何その色気のない声。夕べはあんなに可愛く啼いてたのに」
「・・・啼くって!?啼くって何ですか!?」
「ああ、君頭悪いから分からないんだ。鳥が鳴くのとは違うからね。啼くというより、喘ぐというか、よがるというか・・・」
「あーーーーー!!もういいっ、いうなあーーー!!」
布団をかぶって閉じこもるツナに、雲雀は楽しそうに声をかける。
「ねえ・・・昨日の話、少しくらいなら従ってあげても良いよ」
布団から恐る恐る顔を出し、じっと見つめるツナ。
「こっちの女たち、要求が多くて敵わないんだ。君ならそんなことなさそうだしね」
布団をかぶったまま固まっているツナに顔を寄せ、雲雀は艶っぽい声で囁いた。
「困ってるんだろう?昼間は僕が君の言うことに従う、夜は君が、僕の言うことに従う・・・いいね?」


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