「恋人」


未来篇のころのお話。

初めて十年後の世界に飛ばされ、そこで二十五歳のヒバリと出会ったツナ。
彼は超スパルタの指導の後、自らツナの手当てをしてくれていた。
十年後のツナの様子など、障りのない程度にポツリポツリと話してくれるヒバリに、次第に惹かれていく。
お互い触れ合うようになるのも、とても自然なことだった。
しかしヒバリは、やがて中学生の彼と入れ替わることは教えてくれなかった。
突然の子供の姿に、恋人とまでは思わないがつい親しみを覚えてしまう。
が、子供の彼はあくまでも冷たい…というより、ツナのことを視界に入れる様子もなかった。
そんな態度にツナはショックを覚えるが、大人のヒバリと彼は同じであって同じではないのだと自分に言い聞かせる。

やがて白蘭との戦いが終わり、未練を残しながらも自分たちの時代に帰るツナ。
思いを持て余すツナのもとに、十年後のヒバリは「逆十年バズーカ」で会いに来るようになった。
ひと時の逢瀬ではあるが、大人ヒバリの変わらない愛情を実感できる甘い時間であった。
しかしその短い時が終われば白煙の向こうにはツナに向けられる冷ややかな視線。
ツナが近くにいるというだけで、彼は不愉快そのものといった表情を見せる。
側にいるだけでこうでは、自分が恋人だと知ったなら…?
その時のヒバリの嫌悪の表情を想像するだけで、泣きたくなる。
絶対に十年後のヒバリとの関係を知られるわけにはいかない。

何度目かの逢瀬の間、ツナは大人ヒバリに、十年後の自分はこの関係を知っているのかと聞いてみた。
するとヒバリは困った顔で、「十年後の君は何も知らない。彼は僕には興味がないから」と告げる。
その答えに複雑な思いを抱きながらも、なぜか少し安心して「俺たち、似た者同士ですね」と微笑みあった。

そして白煙。

相変わらずの不機嫌な顔で目の前に立つ中学生のヒバリに、困ったような愛想笑いを浮かべながら何とか取り繕って、立ち去ろうとツナは背を向ける。
何歩か歩き始めたツナの背中に、低い彼の声。
「君は、十年後の僕と会っているの」
思わず立ち止まるが、振り返れない。
ヒバリがどんな顔をしているのか、確かめるのが怖かった。
「・・・ごめんなさい」
しばらくの沈黙の後、ツナが言えた言葉はそれだけだった。

背を向けたままどうすることもできないツナは、やがて背後に気配を感じた。
と思った瞬間、後ろからきつく、抱きしめられていた。
戸惑うツナの背中から、小さな低いつぶやきが聞こえた。
気を付けていなければ、風にかき消されてしまう程の。

「・・・どうして君は、僕を選ばないの」




おわる。
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