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昨日の夕方、ようやく見張りの風紀委員から「完成」との報告を受けた。
そこでようやく、イラつきを通り越して何故か焦りを感じていた僕は、ほっと胸を撫で下ろしたのだった。

沢田が寝入った後に部屋に忍び込んでみれば、机の上には黒地に白の格子模様の箱。
思わずくすり、と小さく笑うと、幸せそうに眠る沢田の頬にキスを落とし、その唇を啄ばんだ。
「・・・まったく、勉強はやらねえ癖に、こういう事だけは必死になりやがる」
頭上からぶつぶつと呟く声。
昨日まで、あんなに心配そうにしていた癖に。
「おやすみ」
もう一度寝ている子の髪の先に口付けると、僕は窓から出て行った。
明日の朝僕にあれを手渡すときの、沢田の顔を思い浮かべながら。


・・・なのに、このどんよりとした空気は何なんだ?

雪の残る寒い朝だというのにパジャマのままで出て来たと思えば、沢田は僕の姿を見て放心状態になってしまった。
まるで幽霊か何か見ている様に。
確かに今日は少し早かったかもしれないが、なぜそこまでの反応?
毎朝迎えに来ているだろう!「何であんたそこにいんの!?」的な反応をされる覚えはない!!
しかも我に返って着替えてきた後も、まるで死刑台への道程を歩いているかのように足取りは重く、虚ろな目は僕を映そうともしない。
・・・大体、ねえ、昨日まであんなにがんばって作ってたチョコは?
まさか実は他の奴になんて・・・いや、いくらなんでもそれは有り得ないよね!?

学校に着くまでの間、結局沢田は一言もしゃべることはなかった。
しかもおはようのキスも行ってきますのキスもしないまま、ふらふらと校舎の中へと消えて行ってしまった。
その姿をしばらく校門の近くで眺めていたが、僕もやがて歩を進め、周りの生徒たちを蹴り飛ばしながら沢田の入って行った校舎に向かったのだった。

「おはようございます!」
応接室に入ればウザイくらいに元気な草壁の声。
「・・・うるさいよ、君の声」
僕が下を向いて立ち尽くしていると、草壁ははっと息を飲んで黙り込んだ。
しばらくの沈黙のあと、ぼそりと低い声がした。
「・・・泣かんでください、委員長。きっと何か理由が」
「泣いてないよ!!」

ああもう、本当に何なんだ、あの子。
ほんとに・・・訳判んない。


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