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しばらく放心状態だった俺がふと我に返り、真っ先に確認したのは時計だった。
七時五分。
大丈夫、落ち着け俺。放課後まであと十時間もある。
いつものだめっぷりは何処へやら、即座に今日の計画を立てた俺は、迷わず階下に降り、ハルに電話をかけた。
ほんとに、ハルにも、ハルの家の人にも、迷惑かけっぱなしだ。
電話口で事情を話と、ハルはちょっと考えてから、「大丈夫」と元気に言った。
「ハル、これからツナさんのお家にチョコの型を持って行きますから。まだ時間もあるし、一緒にがんばれば」
「・・・ダメだよ」
俺はハルの言葉を途中でさえぎった。
「俺のせいで、ハルが学校サボるなんてダメだ。そんなことさせたら、俺きっと自分を許せない」
俺は馬鹿でどうしようもなくてハルに頼りっきりだけど。
でも、そんなことはさせられない。させちゃいけない・・・と思う。
「大丈夫!もうハルの家で何回も作らせてもらったし、もう俺一人でも何とかなると思う。
・・・ごめん、でも悪いんだけどハル、学校行く途中に抜き型だけ届けてもらっていいかな・・・?」
ハルはしばらく黙っていたが、やがて受話器から明るい声が響いてきた。
「判りました!ハルも、今のツナさんなら大丈夫だと思います!早速今から届けに行きますね。マッハですから!」
「うん、ありがとう、ハル!」
ハルが物凄く心配してくれてるのが伝わってくる。
俺は感謝の気持ちでいっぱいになりながら受話器を置いた。

ハルがマッハって言うんだから、きっと本当にマッハだよな。

すぐにやって来るであろうハルを迎えるため、俺は玄関を出て外を見に行った。
扉を開けてはじめて、昨日の雪がうっすらと積もっていたことに気がついた。
そういえば、今朝はやたらと窓の外が明るかったっけ・・・ハル、自転車通学だけど大丈夫かな・・・。
心配しながら家の壁の外を覗き見る。
すると。


「おはよう。今日は早いね」
落ち着いた、低音の声。そう、毎朝聴いている・・・。

「まだパジャマのままだけど?待ってるから、早く着替えておいで」


そうだ。すっかり忘れていた。

俺、学校サボれないんじゃん・・・。


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