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あの後しばらくしてヒバードも目を覚まし、「ジュウゴセンチ、ジュウゴセンチ〜」と歌いながら元気に飛んで行ってしまった。
ハルと俺もほっと一息つくと、時間が遅くなってしまったことに気付き、大急ぎで片付けを済ませてから三浦家を後にした。
早足に歩いていると、小雪がちらついてきた。
寒いとは思っていたけど・・・まさか、大雪で明日休校、なんてことないよね!?
そうなったらヒバリさんの自宅まで届けに行こうと決心し、家までの道を震えながら急いだ。
家に帰ってこれまたばたばたと食事と準備を終え自分の部屋に戻ると、そこでようやく出来上がったチョコを鞄から取り出てみた。
それは我ながら惚れ惚れする位いい出来で、ついじっくりと眺めてしまう。
いやいや、こんなに握り締めてたらチョコ溶けちゃうから!
名残惜しいけど箱をモノトーンのシンプルな包装紙で包み、小さなリボンのついたシールを貼り付けてから(本物のリボンをかけてみたが、凄いことになったのでやめた)、机の上に置いて、ベッドに潜り込んだ。

明日、ヒバリさん喜んでくれるかな。

「おやすみなさい」
小さく呟いて目を閉じると、すぐに意識が薄れていった・・・。


そして。


「あああーっ!!!」


朝、珍しく目覚ましが鳴る前に目を覚ました俺は、あるべき筈の場所からこの一週間必死の思いで作った大事なものが姿を消していることに気がついた。
慌てて机の周りや布団の間、部屋のいたるところを隈なく探し回ったが、それは姿を見せない。
同じ部屋のハンモックで寝ていた筈のリボーンに聞いてみようと階段を駆け下りると、チビ達の賑やかな声が聞こえて来た。
「へへ〜ん、おれっちのだもんね〜、イーピンになんか絶対あげないもんね〜」
「ダメ!ランボ、ツナさんに返しなさい!」
いやな予感がして勢いよくドアを開けると、そこには取り合いをするランボとイーピンの姿。
二人の手の中にあるのは、まさに今俺が探していた、モノトーンのラッピング。
「おーツナ、ランボさんへのプレゼント、ちゃんともらっといてやったぞ!」
「もう、ランボ、勝手に持ってきちゃダメだってば!」
俺に見せようと、箱を高く掲げたランボの隙を突いて、イーピンが鋭い手刀で叩き落とす。
箱はそのまま思いっきり、床に叩き付けられた。
「・・・あ」
背中がひやりとして、俺はそのまま動けなくなってしまった。
イーピンは箱を拾いとてとてと小走りに俺に近づいて、それを差し出した。
「はい!」
にっこりと笑顔で箱を差し出す子どもの笑顔を前に、俺は「ありがとう」と礼を言いながら受け取ることしかできなかった。

まだ言い合いをしている二人を背に、自室に駆け上がってドアを閉めると、恐る恐るラッピングをはずしていく。

案の定そこには、無残に砕け散った無数の「大好き」の欠片があった。


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