29


一昨日作ったのは、流し込むのが遅くて表面がクレーターだったし、その前のは流れ出してしまって、ハート型ではなくヒトデ型だった。
昨日のはうまくできたのに、「大好き」の文字が「大タえそ」になってしまった。お皿の上で、ちゃんと練習したのに・・・。
一週間の余裕があったにも拘らず、バレンタインデイはもう明日。もうだめかも・・・と思っていたら。

「すごいじゃないですかあ、ツナさん!」
「うん・・・いいよね、これ、大丈夫だよね?」

今日のは綺麗なハート型。
市販のチョコを溶かしただけだから問題ない筈だけど、一応味見もした。
そして文字も・・・一時間の練習の成果か、ちゃんと「大好き」に見える。
今日の・・・完璧だよう!
「どうしよう・・・嬉しいかも・・・」
「よかったですね!」
自分のことのように喜んでくれるハルの手を取り、我慢できずにその場でぴょんぴょんと飛び跳ねてしまった。
「ありがとう!ハルのおかげだよ!」
抱きつこうとして両手を広げたその途端。


ひゅん


ハルと俺の目の前を、何かが凄いスピードで通り過ぎた。
それはそのまま壁に激突したかと思うと、ずるずると壁伝いに落ちていった。
「え・・・ヒバード?」
その見覚えのあるふわふわの黄色い物体は、いつも俺の大好きな人の頭の上を陣取っている小鳥だった。
「ジュウゴセンチ・・・チカク・・・ダメ・・・」
駆け寄って抱き上げると、完全に目を回して、よく判らないうわ言(?)を洩らしている。
「あわわっ、大変ですう!キュートな小鳥ちゃんがあ!」
ハルは慌ててヒバードをクッションの上に寝かせ、ミニタオルを載せて暖かくし、水を飲ませてくれた。
俺たちは二人して黙ったまま、ヒバードを見守っていた。
やがてハルが、下を向いたままぼそりと呟いた。
「・・・小鳥ちゃんの看病って、これでいいんでしょうかね・・・?」
・・・うん、ハル、俺も今それ考えてた。


次のページ

-29-
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -