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あの日以来、俺とヒバリさんはすごく・・・その、うまくいってる、と思う。
朝は必ず家の前まで迎えに来てくれて、学校までの道のりを手をつないで歩く。
ヒバリさんは顔に似合わず実は物凄いキス魔で、やたらに理由をつけていろんなとこでキスしたがるんだけど、最近では人目につかない場所を選んでくれるようになった。
相変わらずヒバリさんの言動には理解できない部分が多いけど、慣れもあってか、ちょっとのことでは驚かなくなってきた。
うん。これも進歩?
そんなこんなで、俺は今本屋の店先で、今が旬とばかりに並べられる料理雑誌の数々とにらめっこをしている。
あ、今、急に話が変わったと思ったでしょ?
ちゃんと関係あるんだよ?
だって、一週間後に迫るバレンタインデイ。ヒバリさんに渡すチョコ、手作りしようと思ってるんだから!

バレンタインなんて、もてない俺には全然縁のない行事だと思ってたし、今年もそのままスルーの筈だったんだけど。
きっかけは、クラスメイトの会話だった。
今は男子からもあげるし、友チョコって言うのも流行ってるんだって。
単純だけど、それ聞いて俄然やる気になってしまった。
だってこんな時でもないと、気持ちを伝える手段なんて早々ないもんね。

人目を気にしながらも雑誌のひとつを手に取り、中をぱらぱらとめくってみた。
そこにはチョコを使ったケーキやらクッキーやらトリュフやらといった、様々な菓子の写真が並んでいて、どれも美味しそうと言うより綺麗だった。
俺はそれらを食い入るように見つめた。
「・・・湯せん?」
頭の中に浮かんできたのは扇子だった。そんなもの、何に使うんだ。
オーブンで160度。・・・俺、数学苦手なんだけど。
ふるう・・・・・・。

「ツナさん?」
雑誌に顔を埋めて?マークを飛ばしていた俺の背中から、聞き覚えのある声がした。
「はひ〜、こんなところで会えるなんて運命感じますう!ツナさんも、雑誌買いに来たんですか?」
特徴のある喋りかたに惹かれるように、ゆっくりと顔を上げた。


あ。
救世主、発見。


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