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結局今日は沢田を抱きしめるだけで終わってしまった。
別に嫌がられた訳ではない。拒絶されたわけでもない。
だが・・・何なのだろう、先ほどの泣きそうな表情が頭に焼き付いて離れない。
仕事で遅くなるからと彼を先に帰らせ(無論風紀委員の一人に後をつけさせている)、一人沢田の態度について考えている内に、ふと思いついた。
ああなんだ、あれか。
マリッヂブルー。
よく新婚の女性に訪れると言う精神的圧力の名前を思い出し、肩の力が抜けた。
まあ、昨日を境に「沢田」から「雲雀」へと変わった訳だし、彼にしてみればいろいろと思うところもあるのだろう。
僕には見当もつかないが。
しかし、こういう時こそ夫として彼を支えてやらなければいけない。
そうだ、不安など感じさせない位愛してやらなければ。
そう考えると、先ほど手を出さなかったのは間違いだったような気がしてきた。
朝の計画通り、一日中繋がっていれば不安など払拭されていたかもしれない。そう思うと、柄にもなく遠慮などしてしまった自分が悔やまれる。
今朝起きた時の彼の掠れた声や、いかにも初夜を迎えたばかりと言った恥ずかしそうな態度は、僕の征服欲を再度くすぐるには充分であった。
消え入りそうに一回り小さくなった沢田を抱きしめながら、僕はふと思いついた。
朝から晩まで繋がっていられたら、この子をもっと独占できるんじゃないだろうか。
そうだ、外回りはともかくデスクワークの最中であれば不可能ではない。
彼の下半身の衣服を膝まで下ろし、僕も前を開けて取り出せば、椅子に坐ったままでも充分挿入出来る。
そうしたら、繋がったままで僕は仕事を、沢田は勉学に励むのだ。
それこそ、一日中でも毎日でも。
明日こそは是非実行しなくてはと意気込みふと時計を見ると、もう八時を廻っていた。
・・・計画は後にして、さっさと目の前の仕事を終わらせなければ。
でないと沢田にお休みのキスが出来なくなってしまう。
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