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俺は今まさに念願の「ヒバリさんと手を繋いで登校」を実行している。
若干気だるさの残る下半身ではいつものようには歩けないけれど、それを察してか、俺にあわせてゆっくりと歩いてくれる優しさが嬉しい。
今朝目が覚めたら目の前にヒバリさんの顔があって、死ぬほど吃驚した。
俺が固まっていると、その顔はふわりと微笑んで「おはよう」と言ってくれて、それでようやく昨日のことを思い出したのだ。
今思い起こしても顔から火を噴きそう。俺なんかすごく女の子みたいな声出した気がする。
恥ずかしくて視線を逸らしながら「おはようございます」って返そうとしたら、声が掠れてて、それを聞いたヒバリさんはそれはもう嬉しそうな笑みを浮かべながら、俺の顔中にキスの雨を降らせた。
だ・・・だって、しょうがないじゃないか!
ヒバリさんてばとんでもないところを舐めたり指入れたりするもんだから、止めさせようと声張り上げてたし、奥の方突かれる度に出る叫び声は止められないし・・・もう声からから。
ヒバリさんはそんな俺の耳元で「夕べ可愛かったよ」なんて囁いて俺をますます紅くさせてから、起き上がって何か甘くて温かい飲み物を作ってくれた。
喉にいいのだそうだ。
それから順番にシャワーを浴びて(一緒に・・・と言うお誘いは全力でお断りしたが特に気にした様子もなく、かえってどことなく嬉しそうな感じだった)、ヒバリさんが作ってくれた朝食を食べて、そうして今、学校への道のりをこうして二人で歩いている。
正直他の生徒に見られたりして恥ずかしいんだけど、でもやっぱり右手に感じるぬくもりが嬉しくて振りほどく気になれない。
ちら、と上目遣いに隣の人を見れば、すぐに気が付いて優しく微笑みかけてくれる。
ようやく恋人・・・って感じがする。
もうちょっといろんな事ゆっくり進みたかったな、と言う希望はあるけれど、こんな風に甘い時間が過ごせるなら、結果オーライかな。
あー、俺ってゲンキン!
そうこうしている内にいつの間にか俺達は校門前に着いていた。
ついこの間まで沈黙が居たたまれなくてやたら長く感じていた道のりも、手を繋いでいるだけでこんなにも短く思えて物足りないくらい。
ああ、これから放課後まで離れ離れなんだ・・・と思うと、広い校舎が恨めしくなる。
いいや!休み時間とか応接室覗きに行くもん!
と少し落ちた気分を浮上させ手を離そうとしたが、ヒバリさんはしっかりと俺の手を掴んだまま、ずんずん校舎の中へ引っ張って行く。
「あ、あれ、ヒバリさん上履き!それに二年の教室こっち・・・」
下駄箱も何もスルーして、向かう先は応接室。
もしかして・・・もしかしてヒバリさんも、離れるの寂しいって思ってくれてる?
せめて今日くらいは、始業ぎりぎりまで側に居ようとかって・・・そうだったら、すごく嬉しい。
勝手な想像で脳みそお花畑になっていた俺は、されるがままに応接室に連れ込まれ、執務用の椅子に腰掛けたヒバリさんの膝の上に、跨ぐ様な格好で向かい合いに座らせられた。
・・・この格好って、なんかいろいろ思い出しちゃって結構恥ずかしいんですけど・・・。
紅くなって俯くと、ヒバリさんはふっと微笑んで俺の右頬に触れた。
「ねえ沢田・・・お願いがあるんだけど」
そう言ってこくんと小首を傾げる。
ううう可愛いよ〜普段かっこいい人のそんな姿、反則です!
「何ですかあ?」
普段滅多に見られない甘えた様子に、ついでれでれとしていると、ヒバリさんはにっこりと無邪気に笑って言った。
「今日一日、挿れたままでいたい」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
って、何を?
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