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放課後の時間をヒバリさんと一緒に過ごし、今日もまた一緒に校舎を出た。
ヒバリさんと付き合いだしてから一週間。
正直俺の気持ちはかなり燻っている・・・と思う。
二人並んでただ黙々と歩く登下校。応接室での二人きりの時間は、沈黙のおかげで宿題が綺麗に終わる。
分かってるけど。
俺たち男同士な訳だし、手ぇ繋いで歩きたいなんてどう考えたってキモイだけだし。
ヒバリさんの「付き合う」の基準はよく判らないけど、少なくとも男女のカップルと同じな筈はないんだ。
そうだよ、何考えてんの俺。勘違いにも程がある。
「お〜い、ツナ〜!」
校門を出るところで、後ろ向きな考えに取り付かれていた俺を呼ぶ声がした。
「あ・・・山本」
振り返ると、校舎の方から駆け寄ってくる友達の姿。
「何二人とも、今帰りか?」
「うん。山本は?」
「部活終わったとこ。しかし、風紀委員の仕事も忙しいのな〜。前なんて、八時くらいに雲雀が校舎出るの見たぜ?」
「そうだね〜って言っても、俺はただ座ってるだけなんだけどね」
ははは、と口を開けて笑う和やかな山本の顔にほっとして、思わず笑顔になる。
なんか嬉しい。なんてことないことなんだけど、ちゃんと会話が成り立ってる。
「ならさ、一緒に帰ろうぜ!・・・あ、でも付き合い始めたばっかなんだし、お邪魔虫かな?」
ぱあっと、自分でも判るくらいに嬉しそうな顔をしてしまった。
お邪魔虫なんてとんでもない!この沈黙を破ってくれるならワラにでも縋る!
「そんなこと「邪魔」
・・・・・・え?
奪われた会話に恐る恐る振り返れば、鬼の風紀委員長が超どす黒いオーラを身に纏い救世主を睨みつけていた。
「君本当に、気が利かないよね」
そう言ったかと思うと俺の腕を掴んで引っ張り、
押し付けた。
唇に。
唇を。
「恋人同士の間に割り込んで、どうするつもり?」
ヒバリさんは何処か馬鹿にしたような笑いを山本に投げつけ、目が点状態の俺の手を取りすたすたと歩き始めた。
手。
繋いでる。
朦朧とした意識の中でヒバリさんの手のぬくもりだけは感じられた。
・・・あったかいんだ。
さっきヒバリさんなんて言った?
恋人?
ああ、俺恋人なんだ。
ヒバリさんの手、あったかい。
そういえば、唇もあったかかった。
・・・・・・・・・・。
冗談じゃねえええ!!!
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