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覚えてないって、何なんだ!
沢田が出て行って小一時間たったというのに、ムカツキは治まらなかった。
さっきのへらへらした顔が頭に浮かび思わずトンファーを投げつけると、がごんと鈍い音を立てて壁に穴があいた。
「付き合えって、言ったのに・・・」
思わず呟くと、不覚にも涙が出そうになった。
大体、おかしいと思ったのだ。
付き合い始めたと言うのに、沢田は相変わらずあのうざったい男らを引き連れて登校して来た。
そんなの、ありえないだろう。
晴れて「恋人」になったのだから、もう他の奴らとは口を利かなくていい筈だ。
これから一生、僕だけと話をして、僕だけにあの可愛い笑顔を向けて、僕だけに触れればいい。
草食動物の群れに目を向ける必要なんてないのに。
僕の中では「恋人同士」になっていたのに、彼はそうではなかった。
それがひどく悔しかった。
・・・とはいえ、諦めるつもりなど端からない。
覚えていないにせよ、この僕に「付き合え」と言ったのだ。
言ったことの責任は取るべきだろう?
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