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「俺と付き合えええっ雲雀いい一!!!」
応接室のドアを蹴倒した半裸の沢田は、室内に入った途端そう叫んだ。
「いいよ」
僕が即答したと同時に彼の額の炎は消え、いつもの沢田がきょとんとした表情でそこに残された。
やっと来たのか、と言うのが正直な感想だ。
彼が僕に惚れるのは当然のことだ。そのためにこの僕が散々画策してきたのだから。
普段なら一般生徒と触れ合うことの少ない僕が、毎日毎日偶然にも君の視界に入っていたのは何故だと思う?
君が入院したと聞いたときは、僕も入院患者として病室に君を招きいれた。
「ぜひとも健全なお付き合いから始めてください!」
と涙ながらに訴える草壁の言葉に従って、病室での軽いゲームまで企画してやった。
僕が仕事の時には風紀委員に見張らせ、仕事が終われば真っ先に彼の元へ言って、
彼が眠るまで見つからないようにぴったりと張り付いた。
(もちろん、寝付いたのを確認してから、お休みのキスをすることも欠かさなかった。)
だからこそ彼のピンチはすぐに察知したし、絶妙のタイミングで姿を現すことも出来た。
この僕がここまでして、堕ちない筈はないのだ。
沢田は何か難しい顔をして、仕事を続ける僕を凝視していた。
その視線に、言葉が足りなかったかと思いつく。
「明日から、放課後毎日おいで」
沢田はそれでも訝しげな顔をしていたが、やがて一礼をして部屋を出て行った。
静かになった部屋で手元の書類を書き上げ、ふと顔を上げた。
沢田がずっと変な顔をしていた理由。
ああ、そうか。
キスでも、して欲しかったかな。
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