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その凛とした姿と強さに憧れていたのは初めからだ。
だけどその人とだめだめな俺の間には目に見えない線が引かれていたから、遠くから見ているだけだった。
いつの間にか、気付くと目で追っていた。
自分の気持ちを自覚したのはつい最近で、だからと言って何が変わるというわけではなかった。
だって俺がどう思ったところで、俺たちの間の線はずっとそこにあり続けているのだから。
そう、俺の家庭教師である一癖も二癖もありそうな赤ん坊が、
「うじうじ悩んでねえで、死ぬ気でぶつかって来い」
と言いながら、愛用の銃を向けるまでは。
「・・・いいよ」
無表情で呟くようにそう言われた途端額の炎が消えた。
相変わらずのぱんつ一丁の格好を恥ずかしいと思う間も無く、頭の中に?マークが飛び交う。
いいって何?何がいいの?
死ぬ気でなかった部分の俺は極度の緊張のためか、その間の記憶がまるでなくなっていた。
自分が何を言ったのか全く覚えていない。
でも・・・この流れでいくと、絶対、告白・・・だよな・・・。
ちらり、と目の前に座っている傍若無人の代名詞を盗み見る。
俺の想い人・・・雲雀さん。
そんな俺の視線に気付いたのか、彼も仕事の手を止めこちらを見上げた。
「明日から放課後毎日おいで」
冷静な口調でそう言うとまた書類の方に視線を移してしまった。
あれ?俺、告白したんじゃないのかな?
もしかしてパシリにして下さいとか、勉強教えて下さいとか(俺に限ってありえないけど)、そういうこと?
まさか勢い余って修行相手に・・・とか!?
いろいろ聞きたい事はあったけど、黙って仕事に集中している雲雀さんを前にその勇気はなくて、俺は頭を下げてわたわたと応接室を出た。
裸の身体に、外の空気は冷たかった・・・。
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