「女の子になんてなれる筈ない!」

沢田綱吉、東北にある田舎の公立中学に通う14歳。
ある日突然黒ずくめの赤ん坊、リボーンが現れ、マフィアのボスになれと言う。
もともと平和主義者で、しかも何をやっても失敗ばかりのツナはもちろん断ったが、リボーンは聞く耳を持たない。
彼のスパルタな修行から逃げ続ける毎日だったが、あるときリボーンは一つの賭けを持ち出した。
「東京の学校に転校し、そこで三ヶ月間女子生徒として過ごす。男だとばれればツナのまけ。その中である男子生徒を誘惑し、恋仲になる。その後男を捨ててこの田舎に戻って来れば、リボーンもこの件は諦め、ツナは元の平和な生活に戻れる。」
そんなの成功する筈ないと思えど、やらなければツナに平和は戻って来ない。マフィアのボス、なんてのの方が有り得ない。

一週間後、ツナはリボーンと共に東京での生活を始め、並盛中学へ女生徒として入学。もともと女顔であったツナは怪しまれることなく溶け込んだ。(リボーンにより理事や校医への手回しはされていた。)
ツナが誘惑するターゲットについては、雲雀恭弥と言う名前だけは教えてもらったが、他には何も伝えられる事はなかった。

登校初日、慣れないスカートに周りの目を気にしながらびくついた態度で学校に着くと、門の周りに生徒たちが群がっていた。
人の隙間から覗けば地面に血だらけで転がっている男子生徒。
そしてそれを足蹴にしながら、楽しそうに口角を上げている学ランの男。
「何見てんの、授業始まるよ」
という一言で、野次馬はさあっと潮が引いたように散っていったが、ツナは恐怖で足が竦み、動けなくなっていた。
黒い学ランの男は、独り残されたツナに気づくと声をかけた。
「君、見かけない顔だけど?」
「は、はい!今日から二年に転入する、沢田綱よ・・・ツナです!!」
裏返る声を必死に抑え答えると、男は少し目を見開き、へえ、と楽しそうに言った。
「僕は並盛風紀委員長の雲雀恭弥。この学校で風紀を乱すようなことをしたら、即かみ殺すから」
こんな風にね、と足元に転がる男子生徒を蹴り上げる。
この人が!?と驚きに声も出せなくなり、口をパクパクさせながら一礼して走り去る。
「て言うか、あんな人誘惑なんて、ありえねーーーーーっ!!」

早々に誘惑計画を諦めたツナだったが、とりあえずリボーンの指示通り、三ヶ月間男とばれずに生活することに専念した。
元々女顔であったツナは怪しまれることなく女生徒としてクラスに溶け込んだ。
しかし問題は体育の着替え。
中二クラスではまだ胸も未発達な女子が多かったため、きっちり下着を着けてさえいればばれる事はなかったが、なんにせよ目のやり場に困る。
教室の隅で恥ずかしそうに俯いて着替えをするツナの姿に、女生徒たちは母性本能をくすぐられるのであった。
男子生徒からは何をやらせてもだめだとからかいの対象であったが、その裏では、そこが可愛いと秘かなアイドルになっていた。
さて、問題のヒバリはと言えば・・・
ツナが一生懸命近寄るまいとしているのにもかかわらず何故か事あるごとにちょっかいをかけてくる。もちろん好意的なものではない。
姿を見せるたびにびくびくと震えるツナの様子を楽しんでいるかのように、何かにつけ嫌味を投げかけたり、天パ気味の髪やその色について何度も問いただしたり、それが当の本人にとっては苦痛だった。
二週間たったある日、ツナは同じクラスの男子に呼び出され、告白される。
もちろん断るしかなかったが、その告白が真剣だったため、ひどく心苦しく思う。
「何やってんだろ俺・・・ただ三ヶ月間だらだらここにいるつもり?周りの事騙して・・・」
教室に戻ると、待っていたかのようにヒバリから校内放送での呼び出しがかかる。
慌てて応接室を訪れれば、ひどく不機嫌な様子のヒバリ。
向かいのソファーに座るように命令され、紅茶を目の前に出される。
何かしでかしたかとびくびくしながらも紅茶を口にしたが、飲み終わってもただ気まずい沈黙が走るのみ。
それはヒバリの「帰ってもいいよ」と言う声がかかるまで続いたのだった。


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