八神について本気だして考えてみた

 




へび?



赤毛で







んー



ベースと



長い白シャツ



つり目



あとはー












「俺、八神のコトあんまり知らねぇんだ」







  
何年目かで
気が付いた








いつも追いかけられる側だったからか
あまり深く考えた事が無かった



そもそもなんで俺の事をあんなに憎い憎い言うんだ

…いやその理由くらいは知ってんだけど

うーん





これってもしかして問題じゃないか

俺は何も分かってないのに
あいつは
呆れるほど俺の事を知っている





「…八神」





ぽつり
呟いて





「…なんで俺なんだろう」





気が付かなければ良かったかもしれない

ふとした疑問





なんで俺なんだろう

その隣は俺でなくても

たくさん、いたはず






…バンドとかやってるとモテるんだもんなー

あんなに目つき悪いのに!

…でもあのルックスは人の目を引くよな

あんなに性格悪いのにっ!





「…でも、んー」



絶え間無く
もやもやと浮かんで

考えれば考えるほど
分からなくて


八神はどうして

わざわざ 俺なんか








「…分かんね」











そういえば小さい頃
よくあいつの家に忍び込んで
困った顔の八神の手を引いて
二人の秘密基地、作ったんだ



何とか仲良くなりたくて

笑った顔が見たくて

捕まえたカブトムシ、渡してやったのに







八神、どんな顔してたっけ


笑った かな


や、想像付かないから
やっぱ困ったような顔だっただろうか





どっちが先に好きになったんだろう

あの瞳に惹かれた
纏う雰囲気に近付きたくて


ずっと
なんとか俺を見て欲しくて


あの頃から









あれ、

追いかけてたのは
俺の方だ



そうだ
確かに
子供の頃は



俺が八神の事を追っかけてた



因縁とか
そんなんじゃなくて



あいつと仲良くなりたかったんだ





思い出した

友達になったと思ってたのに
しばらくしてからコロスコロスって言い出して





それがいつから

こんな感情に変わったんだ






スキ

とか

キライ

なんて









「何を一人でぶつぶつ言っている」



「っ、わ」



突然背後から声を掛けられて思わず短く声をあげる





「俺だってイロイロ考える事もあんだよ!」



「ほぅ…無い頭で考えて、なにか導き出される答えはあったのか」



「ぐ…!!ムカつく…」





いつもこんな調子で
何も掴めないままに今まできた



聞いてもいいだろうか

知らないこと

知りたいこと






「…、…の」






考えれば震えそうになる

不安をぶつけるように





「俺の知らないことって、いっぱいあんだろッ」








どんな少年時代を過ごしたのか



実家で暮らしていた時はどんな風にしてたのか



初めて恋をしたのは誰だったんだ



どんな風にその腕に抱いたんだ



総てをこなれたように振る舞えるのは
慣れた相手が居たからか



俺とこうなるまで
もっとフツーの恋をしていたんだろうか



今さらどうしようもない
過去なんか変えられるはずもないのに







「…なんで、」







気がつけば
嗚咽混じりに






「おれ、お前の事…何も知らない」






相容れないはずの
紅と蒼


混ざり合うように
こんな関係になってしまって






「なんで、」






ずっと



気が付かない振りをしてた








「…俺、」







俺が
一番じゃなきゃ嫌だ







「俺は、さ」







そんな

ひどく子供じみた

自分勝手な

感情







「…っ」







なぁ
お前の目には


俺の姿は
どんな風に映っているの


なんて


言葉が
出てこなくて










「京」





名前を呼ばれて
きゅうと胸が締め付けられた



また
少し困ったような顔をして



うずくまる俺の目線まで下りてくる





「京、」



「…ぅ、」





聞いたことも無いほど
優しく響く声





「…どうした」





擦り寄るように
頬が触れて





「な、んでも、ねぇッ」





さっきまであんなに
俺が一番じゃなきゃ
…なんて思ったのに





「そうか」





いざこんなに近付くと
張り裂けそうなほどに
愛されてる事を感じて





「…」





何も
言えなくなってしまう













「…勝手な想像で泣くのか貴様」



「う、えぇ!?」



「ふん、どうせその少ない脳みそをフル回転させて俺を悪い男に仕立て上げていたんだろう」



「…う」






悔しいけど

八神の方がいつも

余裕があって






「そ、んな事、ねぇ…よ」



「ふん」





俺が考えてる事なんか

いつも

見透かされてしまう





「あんまり勝手な妄想をするようなら、その身体に教えてやろうか」



「いっ…や、してねえよ!してねぇ」





呆れたように笑い
その影がかかる





「ーや、が…」





「ふ…、俺をこんなに煽るのは後にも先にも





お前だけだ」









そう言って


冷たい唇が触れた
















八神について知ってる事





結構
性格悪いのに


何だかたまに

優しくて




…あと


多分俺が居ないと死んじゃうってくらいには



俺の事、好きなんだろう





…え、それは俺も?





うーん




いや、八神の方が俺の事を好きで、だな

俺はまぁ仕方なくっつーか

付き合ってやってるっつーか…




………




よし!
八神について考えるのは


この辺でよしとしといてやる













――――――――――――
おわり



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