やわらかい あおV







翌日







いつものように
学校帰りの京を見付け
ふらりと目の前に立つ



「…何だよ」



ムッとした表情を隠そうともせずにこちらを向く

何がそんなに気に入らないのかと問いたくなる


まぁいつも我が儘、俺様な京の事だ

一々気にかけていてはこちらの身がもたない



そう思い、構わずにその左腕を掴み、強く引いた



「っ!」



その手首を捕らえた、瞬間



ばしっ



間髪入れずに
強く撥ね除けられた




「……」



俺と目線を合わせることなく
踵を返して離れようとする京に



ピリと走る殺気のようなもの


そして
隠れない
己の 独占欲



無言で立ち去ろうとする背中に
堪えきれず声を掛けた




「京」




瞬間
足を止めて
ぴくりと反応する背中


言葉は返ってはこない



あの反応は…―




「どうした、京」



こちらを向け

いつもの瞳で俺を見ろ

さあ、




「………ぃんだよ」



背中を向けたまま



ぽつり







「……もうお前のとこには、行かねえよ」








小さく呟いて
離れていく靴音




俺が持っている鞄にすら気が付いていない



あぁ そうか


それほどまでに…―







「俺が他の奴に現を抜かすのが気に食わないのだな?」






ざっ…



その言葉に足を止め


少し距離が空いたのにも関わらず

不機嫌を通り越した殺気が
ひしひしとこちらに伝わる







「……死にてぇのかよ八神」






小さく

でも確かに



漏らしたその声は
おおよそ一般的な"好意"とはかけ離れたそれで








「誰が、いつ、テメェにっ」



これでもかと言うほどに憎々し気に
こちらを振り向く





「そんな阿呆みたいな感情を抱いたっつーんだよっ!!」





ざりっ


言うが早いか

砂利を蹴る音と共に
握り締めた拳がこちらに向かう


ビュッ


ガッ、



こちらも一応の防御は見せるものの

駄目だな
全く拳に力が乗っていない



バシッ

バシッ




これでは 只の

駄々っ子が喚いてるのと同じだ…―





「京」


「うるせぇッ!!」




呼ぶなよ
もう、俺の名前を 呼ぶな




言ったと同時に

ゆらり

赤い炎が全身に滲んだ





「京、」


「うるせぇッ!」



ゴォォオ



熱を込めた拳に相対するように
仕方なしにこちらも蒼を灯す



「………まったく」



ゆら



蒼い色をしたそれを
赤を包むように拡げた



「……!?」



いつもと様相の違う炎に
違和感を感じた京が

勢いを緩めて
こちらを見た




「…なんだよ、」




しゅぅぅう




赤く燃えたそれを自ら消して

やっと言葉を聞こうとしたようにこちらを向く





「何なんだよッ、お前!」





伏せ目がちだった視線が
ギッと敵意を露にこちらを向く





「いつもいつもいつもっ…」




怒っている ようで

今にも涙を溢しそうな 表情







「そうやって、ふらふら近付いたりっ、離れたりッ」





あぁ

この黒髪から覗く黒い瞳






「わけ…分かんね…」






そう言い終えて
また俯き

くるりと踵を返して離れようとする姿に




堪らずに、
手を伸ばした









 


[ 2/64 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -