ツナの弟?


ふと、雪が一つの疑問を口にしたのがきっかけだった。


「あれ? ……ねぇねぇ、ツナに弟っていたっけ?」
「へ? 何言ってんの、雪……そんなのいないけど?」
「え、でもその子……」


雪が指差した先は綱吉の背中。
そこには、見覚えのない、とても特徴的な髪型をした牛柄の服を着た赤ん坊がいた。
外見年齢はリボーンとそう大差ないだろう。


「えぇぇぇぇ!? ラ、ランボ、何勝手に学校まで着いてきてんだよ!」
「へぇ、その子ランボって言うんだ」
「ランボさんねっ、リボーン倒すためにねっ、ここまで来たんだよっ!」


ランボと名乗る子供は、自信満々の顔つきでそう告げる。
そんな彼の言葉に、だけど綱吉の顔はどんどん青ざめていくだけだ。


「ここにはリボーンはいないって! ……いや、いるか」


今まで散々神出鬼没さを見せつけてくれたのだ。一概に彼がここに居ないとは言えない。
むしろ、今この瞬間でも彼らを見張っている可能性のほうが高いだろう。

そこで、暴れ猪と定評のある(あながち冗談ではない)未来が登場する。


「あれ? 綱吉と雪、廊下のど真ん中に突っ立ってどしたん?」
「あ、未来未来ー! あのね、ツナの背中に子供がいるのー!」
「……は、ちょ、綱吉……避妊くらいしろよドン引く……」
「君は激しい誤解をしている!」


完全にノリノリな未来は、すぐにけらけらと笑いだす。
そして改めて雪の手元にあるランボを見つめた。


「で、この子何? 不思議な格好してんね。どっから誘拐してきたの?」
「だからなんで未来の脳内ってそんな極端なの!?」
「冗談冗談、どしたのこの子……」
「なんかいきなり現れてさー……リボーン倒すって聞かないんだよ」


ふーん、と相槌を打ち、ランボの顔を覗きこむ未来。
そして何かに気付いたように、「あれっ」と声をあげた。
そんな未来に、綱吉と雪、二人分の視線が集まる。ランボの視線は窓の外を飛ぶ蝶々に向けられていた。


「この子、ボヴィーノファミリーの子じゃん」
「え、未来知ってるの?」
「うん、中小ファミリーだよ。昔ボヴィーノと同盟組んでたファミリーに行ったことがあって、その時にちょっとね」


そう未来が言うが早いか、背後から未来を呼ぶ声が響く。
少しだけ掠れた声、それは紛れもなく獄寺の声だった。


「おい未来、テメェ今日日直だろうが! 仕事しろよ! お前と仲良いと思われて俺に仕事押し付けられてんだぞ、俺が!」
「え? 何それウケる。プゲラ」
「ナメてんのかテメェ! 今までもムカつく野郎だと思ってたが、今日こそ吹っ飛ばしてやる!」
「何、それもウケる。プゲラ」
「獄寺気付いて。完全に遊ばれてるだけだから」


本気の争いに発展しそうになる前に、いつも通り雪がストッパーになる。
そこでようやく、獄寺は雪の手に抱えられた見慣れぬ物体に気付くことになる。


「あ? んだ、それ……」
「あぁ、ボヴィーノファミリーの子」
「! 敵襲か!?」
「うん、リボーンにだけどね」


苦笑する雪に、唖然とする獄寺。
そのまままじまじとランボの姿を見つめ始める。


「いや……リボーンさんもあのお体であのポテンシャルだ……こいつも」
「がはははは! お前タコみたいな髪型してるんだもんね!」
「……は、ねぇな」


青筋を浮かばせた拳を震わせる獄寺は、今に殴り掛かりそうだ。
それを阻止するために、雪はランボを背中に隠す。


「っつか隼人、乙女に野郎はなくね?」
「遅ぇよ、反応が!」


ごもっともなツッコミである。


「あれぇ? リボーン、ひょっとしてここにいないぃ?」
「ようやく状況を理解したみたいだねこの子」
「てか雪、よくその子胸に抱けるね……僕、子供って苦手」
「えー? 可愛いよー」


完全にほのぼのしたムードに入ってるところを、次のカオスがやってくる。

鋭い飛び蹴りが雪の手をすり抜けランボを襲う。
その飛び蹴りをもろに頬に喰らったランボは、そのまま為す術なく壁に突撃していく。


「り、リボォオオン!?」
「……容赦ねー……」


あの未来でさえ青ざめるほどの暴虐さである。
それでもそれをやらかした当の本人、リボーンは汚れを拭くように自分の靴を磨く。


「だってうるさかったんだもん」
「可愛くないから!」
「ってかリボーン、あの子ボヴィーノの次期ボスでしょ? いいのそんなことして」
「問題ねーぞ、ボヴィーノじゃボンゴレには適わねぇからな」


あぁ、そう……と納得しながらも憐れむ視線を壁に寄りかかり気絶しているランボに送る未来。
そんな未来の言葉に反応したのは、雪だった。


「えっ、あんなに小さいのに次期ボス? 候補じゃなくて?」
「あぁ、うん。中小ファミリーにはよくあること。ボンゴレみたいに部下も多い有名どころは流石に候補からの選択だけどね」
「へぇ、そうなんだ……」

ちなみに、この後号泣したランボが10年バズーカをぶっ放すのは、また別の話である。

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