一件落着?


「あなたが……ボンゴレ10代目ね」


しばし、教室の時間が止まる。
それもそうだろう。明らかに学内関係者でもない者が唐突に意味不明な単語を口走ったのだから。

真っ先に我に返った未来は、すぐに獄寺を自分の背後に隠すように立ち憚った。
そして彼女はありったけの声で叫ぶ。


「隼人、回れ右! つか、後ろ向け!」


だが、未来の忠告はすでに遅かった。
極限にまで青くなったその顔色は誰がどう見ても尋常ではない。
ふらふらと今にも倒れそうに揺れる四肢に、腰が抜けていく体を見て、未来は舌打ちした。


「まだ距離があってビアンキ姉の顔を直視してないからぎりぎりセーフってか? 意地張ってねーで寝なさい」


未来はそう言うだけ言って、ペシリと獄寺の銀色の頭を叩く。
すると獄寺はまるで途端に糸でも切れたかのように、ゆっくりと意識を失っていった。


「え、ちょ、ご、獄寺君!?」
「あーあー、いい、いい。綱吉、隼人はそこに寝かせといて。しばらくしたら覚めると思う」


冷静に状況を判断した未来がそう言う。
そして彼女は、ビアンキと呼ばれた紫色に近い桃色の髪をした女性へと目を向けた。


「久しぶりね……未来」
「お久しぶり、ビアンキ義姉さん。来るってのは知ってたけど、前もって一言言ってほしかったなぁ……」
「あら、ごめんなさい。私も私でばたばたしていたのよ」


ビアンキと未来の何やら込み入った会話に、雪が割って入る。
恐る恐ると挙げられた手は、意味を為さないがそれでも挙げられずにはいられなかったのだろうか。


「まったく話が理解できないんだけど……未来、その人と知り合い?」
「あぁ、うん。この人僕の義姉さん。隼人の義姉さんでもあるよ」
「えっ」
「うん」
「えっ」
「うん」


しばらくの沈黙。
今や教室中の意識が未来たちのほうへと向けられていた。
そして一呼吸を置いて、


「えぇえええええええええええええ!?」
「うん」



***



「僕は拾われ子、隼人とビアンキ義姉さんは腹違いの義父様の子供。理解した?」
「い、一応理解したけど……」
「詳しいことは、複雑すぎて僕の口から言えない。気になるようだったら隼人に聞くといいよ、はぐらかされるだろうけど」


随分と簡易的な説明を済ました未来は、ふぅ、と息をつく。
ビアンキはいまだにドア元に立ち、一連の出来事をじっと見つめていた。
未来の発言に、やはり生易しい過去ではなかったのだろうと推測ができた。そんなこと言われては、もちろん誰もさらに深く聞くつもりがなくなってしまう。


「そういうことだぞ」


空からいきなり降ってきた小さい影は、いうまでもない……リボーンだ。
神出鬼没な彼に今更誰も驚くまい。


「リボーン! お前、どこにいたんだよ!」
「ずっとここにいたぞ」
「全然気づかなかったぜ……すげーのな、小僧って!」
「山本……そこ、すごいで片付けることじゃないから」
「え、そうか?」


失笑し何も言えなくなった未来は、獄寺を保健室送りにするための行動を開始していた。
その背後で、ビアンキが急激に取り乱す。


「リボーン! 探していたのよ……ここに居たのね。さぁ、私と一緒にイタリアに帰りましょう」
「ビアンキのことは、俺が何とかしておくぞ。いろいろ解かなきゃいけねー誤解もあるみてーだしな」


リボーンはそういって、顔を赤らめながら一人でこれからのプランを立てているビアンキの肩に乗る。
そんな些細な行動さえも、彼女を興奮させる材料の一つなのだけれども。


「あぁ……リボーン。そうやって肩に乗ってくれるのも久しぶりね……」
「それじゃあ……リボーン。お願いするね」


雪が少し戸惑うように言ったが、リボーンはニヒルに笑うだけだ。


「任せとけ」

「ちなみにリボーンとビアンキ……さん?ってどんな関係なの?」
「愛人だ」「愛人よ」
「ブッ!」
「嘘ぉっ!?」

[ 3/58 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]


indietro


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -