兄弟子さんの威厳を見せてくれ!


「まぁ
何はともあれ」

ふ、と薄く息を吐いてディーノは雪たちから視線を外し、綱吉のほうへ向き直る。
どこから持ってきたのか、決して安くないであろう黒塗りの皮のオフィスチェアに浅く腰掛け手を組んでディーノは改まった。


「リボーンの腕は確かだ。きっとおまえも、立派なボスになれる。……それでも一生やらねぇっていうのなら……」


ディーノの長く角ばった男らしい手が彼自身の懐を探る。
見慣れたその動作に、雪は瞬時に氷のダガーを、未来は刀を作り上げ構えた。


「ひ、ひぃい!」


ただならぬ自らの部下たちの殺気と迫りくる危機に、綱吉は悲鳴を上げて後ろにのけぞった。


「……咬むぞ!」
「……え」
「か、亀……?」
「人が悪いですぜ、ボスぅ」


ディーノの手にあったのは銃などではなく、なんともかわいらしい甲羅の亀だった。
どうして懐に亀を隠しているのだろうという思考はさておき、ロマーリオの苦笑をディーノは軽く流した。


「こいつはエンツィオっていうんだ。リボーンにレオンをくれって言ったら、代わりにくれたんだ」
「このレオンは、俺の相棒だからな」
「なんなんだ、この人たち……」
「はぁ……」
「びっくりした、勘弁してくださいよ、ディーノさん……」


安堵のため息をついて雪と未来は自らの武器を下ろし、消した。
自らのボスに武器を向けられているのに、少しも動かなかったディーノの部下にもひやひやさせられていた。
大事にならないとわかっていたのか、それとも油断していても二人から簡単に武器を奪えるとわかっていたのかわからないからだ。


「はははっ、悪い悪い! でもいいな、反応が速かった」
「まぁ、自分らのボスだからね」
「目の前でボスが撃たれたら示しつかないよね」


ねー、とうなずき合う二人。
ふと気づくと、綱吉の部屋の外、廊下側が騒がしい。


「ぶろこりーのおばけ!」
「……この声」


聞き覚えのある声に未来たちが気を取られるが早いが、ばたんと激しく部屋のドアが開かれた。


「退治!」
「う、うわぁ! こんな時に!」
「……あれ、この子こないだの! いつの間にツナの居候になったの?」
「い、いろいろあって……って、あ、こら!」


続けてランボが爆弾をもって部屋の中へと入ってくる。
唐突すぎて理解すらも追いつかないうちに、ランボはそのまま転び、手の爆弾のピンを抜いてしまった。
そしてその爆弾は勢い余って窓の外へ飛んで行ってしまう。


「馬鹿ぁ!」
「やべぇな、外にはディーノの部下たちがいるぞ」
「ッ――」


未来と雪の腕が反射的に前に突き出される。
だがその刹那、


「テメェら、伏せろ!」


ディーノの影が視界の中から消えたかと思えば、彼はそのまま窓から飛び出たのだ。
手に持った鞭はまるで意思を持ったかのように難なく爆弾に巻きつき、勢いをそのままに空高くへその爆弾を飛ばした。
片膝と片手を地面に着き、最小限の衝撃とともにディーノは華麗に着地する。そんな彼の背後でまるで花火のように、爆弾は爆発した。


「ははっ、まーたボスが何かやらかしたなぁ」
「一日一回はドッキリさせやがる」
「今のは違うって……」


部下たちに笑われて、頬を真っ赤にさせるディーノ。
そんなまさに「頼られるボスの図」を見て、綱吉は「あの人格好いい……」とつぶやいた。


「なるほど、確かに綱吉のボスとしての覇気を出させるためには完全に適役だね」
「ツナと似てる境遇で、年上で、お手本ね……」
「雪ならあのボスついて行けると思う?」
「うーん、どうかな。厳格なボスのもとでしか働いたことがないしね……ツナの部下らしいことはまだしてないし、よくわかんないかも。未来は?」
「僕は全然いける」


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