ビタミン剤はいかが2



彼は不器用な人間だと思う。魔法薬学の先生が不器用だなんて笑っちゃうけど、そういう手先の不器用さじゃなくて、この人の本質的な部分の話だ。


「セブルス、ハリーったらあなたのこと誤解してるわ?」


賢者の石を狙っているのはセブルスじゃなくてクィレルなのにね。むしろ守ってる側なのに、可哀想な人。

彼のその闇夜のような真っ黒な容姿や、生徒思いがゆえの厳しさが誤解される原因となってるのだけれど、分かっていながら彼はそれを直そうとしなかった。そこがまた彼が不器用だと思う部分だ。まあ、ハリーに意地悪なのは本当のことだから擁護はできないけどね。


座るセブルスの後ろに立ち、彼にもたれかかった。彼は何も言わずに、ただ提出された1つ1つのレポートを丁寧に採点していく。早朝から大変だ。


「ハリーも大きくなったわ」


あの時、リリーを救えていたら、ジェームズを救えていたら私たちはどうなっていただろう。まだいっしょに笑ってられたのかな。

そう考えてもキリがないことを私は知っている。結局私は彼女たちを守ることはできなかったから。あの大切な私たちの幼馴染は、愛した息子を守って死んだ。今でも目に焼き付いている。あの悲しみの日、幼いハリーを抱きしめて涙を流すセブルスの姿を私は忘れることはないだろう。

大好だったリリー、大好きだったセブルス。いつかの平穏な日々はあの日よりもずっと前に壊れてしまった。


「リリーの子にしてはひっどいレポートね。
ジェームズに似たのかしら」


ハリーのレポートで手が止まる彼の横からそれを見る。ジェームズも優秀ではあったけど魔法薬学はそれほど得意ではなかった。きっとハリーはジェームズに似たのだろう。無謀なことに飛び込んで行く彼の後ろ姿は、かつての友人にそっくりであった。だからこそ、セブルスはハリーに当たりがきついのだろう。だって悔しいけどセブルスはリリーのことを今も愛しているのだから。


「ナマエ...」
「なあにセブルス」


小さく私の名前を呼ぶ彼に答える。もう朝食の時間よと、私は彼の肩を撫でた。彼は少しの時間固まったまま動かなかった。そして、机の上にあった彼に似合わないオレンジの飴玉を口の中に入れる。私が大好きだった橙色の丸いキャンディー。彼には似つかわしくないこの色を彼は毎朝のように舐めるのだ。


「セブルス、いってらっしゃい」


優しく彼にキスをして、部屋を出て行く彼を見送る。そうして私の1日ははじまるのだ。






なんか続きを書いてしまった