ハロウィン当日、チアキはダフネと別れ、ハーマイオニーを探していた。
実家から送られてきた日本のお菓子をハーマイオニーにおすそ分けしようと思ったからだ。
しかし、いくら探せど彼女は見つからない。


「ねえハーマイオニー知らない?」
「いや授業終わってから見てないよ、ハリーたちなら知ってるんじゃないかな?」
「ありがとう」


ハーマイオニーを探すのを一旦諦めて、ポッターとウィーズリーを探す。
ポッターは有名なためか、人に聞いたら二人は案外早く見つかった。
チアキは中庭で話し込む二人に声をかけた。


「ねえそこのポッターにウィーズリー!聞きたいことがあるんだけど」
「わっ!キリタニじゃないか!」
「どうしてそう驚くことがあるの」
「いや...なんでもないけどどうしたの?スリザリンの君が僕たちに用があるだなんて」


飛び上がる二人にチアキもびっくりしたが、構わず話しかける。
ハーマイオニーを見てないかと聞くと二人は目を泳がせたじろいた。
いつかのクラッブとゴイルのようだ。


「なに?あんたたちハーマイオニーに何かしたの?」
「いや...」
「はっきりして!」


言葉に詰まるロンにイラついたチアキは声をあらがせた。
その声にまた二人は肩をゆらす。


「実はロンが....」
「僕のせいって言うのかい!?ひどいよハリー!」
「何をやったのウィーズリー、言わなかったらもっとひどい目に合うけど」


脅しに負けたロンは先ほどの出来事を話す。
それを聞いたチアキはびっくりして目を大きく開いた。


「ウィーズリー、あなたってばほんとに最低ね。ハーマイオニーに友達がいない?私が彼女の友達よ!ハーマイオニーは優秀だし、あなたが羨むのもわかるけど、そんなこと言うあなたたちはただの愚か者じゃない」
「でも君はスリザリンじゃないか」
「寮が何?あなたがそんなこと言う人だとは思わなかったよポッター、ドラコと言ってること違わないじゃない」
「あいつと一緒にするな!」
「一緒よ!最低野郎!」
「落ち着いてよキリタニ」
「落ち着け?どの口が言うの?あなたが最初にハーマイオニーにひどいこと言うから怒ってるのに!何様のつもり?ウィーズリー様と呼べばいいの!?いいご身分ね!」


スラスラと言葉が出るチアキに押されていくハリーとロン。
普段、おとなしいと思っていたチアキがこんなに激しい人とは思わなかったのだ。
チアキはたじろぐ彼らの態度にも腹が立っていた。
自分の友達がひどく言われたら怒るのは当然だ。
だが、最初は驚いていたロンもチアキに言い負けてがならないと大声をあげた。


「さっきから言いたい放題じゃないか!なんだよ!」
「ロン!君も落ち着け」
「大体最初は君のドラコが原因なんだからな!」
「ウィーズリーは何を言っているのポッター」
「キリタニも落ち着いてくれ」
「いいか!ドラコのせいで僕たちひどい目にあったんだからな!!」
「待ってよ!ドラコがあなたたちグリフィンドールに失礼なのはほんとだけど今はその話関係ないじゃない!」


睨み合う二人の間にハリーは入るが全く意味をなしていなかった。
正直、ハリーは最初にひどいことを言ったロンが悪いと思っていたし、チアキが怒るのも当然だと考えていた。
止めようとはするがどんどんヒートアップしていく二人に元々温和な彼は萎縮していく。
誰か助けてくれと思いながらハリーは今にも殴りかかりそうなロンを抑えていた。
しかし、細腕のハリーには兄弟の中で揉まれてきたロンを抑えることはできず、ロンは名前に殴りかかった。


「ロン!女の子に殴るなんて!」


最初は小柄なチアキがロンにやられると思っていたハリーだが、すぐにその考えを改めた。
チアキはロンを躱すとがら空きの顔に拳を埋めようとした。
ロンは殴られると思ったが、その拳は目の前で止まっていた。
ロンはその場にへたり込み、ハリーも驚いて口が開けたままになっていた。


「チアキ!」
「あっダフネ」
「あっダフネじゃないわ!怪我はない!?」


駆け寄ってきたダフネに大丈夫とだけ答えると、座ったままのロンの手を掴み立ち上がらせる。
ロンはまだ気が抜けたままだ。


「やりすぎたわごめん」
「いや....」
「ポッターも悪かったわ、ドラコがしたことについても私から謝る」


呆然と立つ二人にダフネははてなマークを頭に浮かべる。
そんなダフネにチアキは声をかけ、二人で歩き出した。
その背中を見てハリーは大声をあげた。


「キリタニ!」


チアキはその声に振り返らなかった。