■■ 汝は_蜥蜴なりや? 第03話
「そうだ、雅マネージャーしてよ。」
「え?遠慮しておきたいのですが。」
自習の時間も終わって、今は普通に授業中。
雅と滝は席が隣同士ということをいいことに、コショコショと話を始めた。
「雅って僕と一緒に帰るって言ったから車での迎えがなくなったんでしょ?バレたらまた車だよ?」
「…車って寄り道出来ないので嫌いなのですが。」
「僕、テニス部に入ってるからさ。仕方ないよね。それにいい体力づくりになると思うよ?」
「テニス部?萩之介はテニス部でしたの?」
「そうだよ、……なに?」
チラっと滝が雅の方を見てみると雅の顔がこれ以上無いぐらいのいい笑顔をしていた。
「…テニス部、ですか。分かりました。マネージャーいたしましょう。」
「何か企んでるでしょ………君がこの学校に来た理由にテニス部が関係してるんだ?」
「はい、関係していますよ。これって運命?と血迷った発言をしてしまいそうなくらい。」
「へー、勿論その内容僕に教えてくれるよね?
あ、もしかして立海に行った理由と同じ?」
「はい、神様は今回…この学校にトリッパ―を飛ばしてきます。勿論テニス部狙いですよ。」
「あー…くそ、前そういう境遇に遇うことになる立海をお腹抱えて笑ったっけ。立海に笑われてると思うとものすごい腹が立つね。」
「フフフッ今回は貴方達が生贄です。
神様にメール返信しますけど、何か言っておきたいことあります?」
「『立海生を巻き込むようにしてください』って言っておいて。」
「萩之介……了解しました。」
「よろしくね。あ、さっそく今日の放課後部室に来てよ。跡部…部長にはもう言ってあるから。僕の親友がマネするからって。」
「えッ…行動早いですね………。」
準備がよすぎる滝に若干引きながらも雅は大人しく滝の言葉に従って放課後、テニス部部室までやってきた。
跡部がすでに居たので滝は跡部に雅を紹介した。そして許可の返事をもらおうとする。が、跡部の反応がない。
「―――以後良しなに…。」
一応外面。
深い意味は無いけど。
「跡部いいよね。雅にマネをやってもらっても。」
「……………。」
「あれ?返事は?」
「………………………。」
固まる跡部、何故こうなった。具体的には雅が鏑木家の者だと言うことを伝えてから身体も表情筋も動いていない。
「…もし?跡部家のご子息?」
雅が着物の袖口を片手で抑える様な仕草を取りながら跡部の目の前で手をヒラヒラ揺らしてみる。
そうしたら跡部が生き返ったのか、目の前で揺れていた雅の手をガシッと捕まえた。
「え、ちょ。」
「おい、樺地。」
「ウス。」
樺地と呼ばれる生徒が跡部の後ろから一歩前へ出てきた。
そして差し出されたものは油性ペンと色紙。
何事かと分からないでじっと跡部を見ていたがあちらも雅をガン見していて見つめ合う結果となった。
「………雅、…跡部がサインしてほしいって。」
見かねた滝が声をかける。
「…ハァ………。」
片手でペンを受けとりそのまま樺地に支えられている色紙へとペンを走らせた。
「樺地、額に入れておけ。」
「ウス。」
「あの…いい加減離してくださいませんか?」
「断る。あの鏑木雅が俺様の目の前に居るんだ。放してたまるか!!」
「!?これでも男なんですけど!!」
「ハァ?んなもん知ってるぜ。俺はお前のファンだからな!」
「……………………お萩。」
先ほどまでのお萩呼びはどこに行った。
「ここをテリトリーにするの?仕方ないなぁ。男子テニス部レギュラー陣の前だけだからね。」
「よっしゃぁああああああああああああああああああお萩!!これ自己防衛としていいよな!?」
「うん、雅の好きなようにどうぞ?」
「放せや!ご子息がぁああ!!」
雅は自らも跡部の腕をしっかりと持ち、そして力いっぱい引き上げてそのまま一本背負い。
「ぐぁあッ!!」
「へッ、俺にセクハラをかますからそんなんなんだよ。これに懲りたら必要以上に俺に触んなよ。俺こんな格好してっけど普通に女子が好きなんだからな。」
どこに行った。さっきまで御淑やかに対応していた雅はどこに行ったんだ。
いや、これがきっと本性。
「ッおい樺地、雅に背負い投げされるのって稀少な体験じゃねーか?アーン?」
「……ウス。」
「雅ー!俺はその程度の攻撃じゃへこたれねぇぜ!!」
「こいつドMだ!?」
跡部家のご子息がこんなにもドMだなんて知らなかった!!
何回か舞台上で特別席に跡部のご子息が居るなぁって気付いてたけど、こんなキャラだとは!!
黙ってたら物凄い美形だから舞台に立ってくんねぇかなぁって思ってたけど!こんな残念なイケメンだったとは知らなかった!
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