■■ 汝は_蜥蜴なりや? 第11話
「景吾ぉ!今日の放課後部活休みなんでしょお?一緒に帰ろぉ?」
部室のドアが開いた。
何というタイミングか。
富布里も跡部を放課後デートに誘いに来た。
既に雅が先約を済ませていると言うのに…無駄足だったな。
しかし只今富布里の言うことはゼーッタイ状態にあるため前言撤回される事になる。
いつもなら雅は跡部以外で行こうと無情にも言うだろう。
しかしだ、今回は跡部に奢ってもらうという使命がある。
男には譲れないものがあるのだ。
「富布里さん。申し訳有りませんが、跡部のご子息とも今日の放課後、遊んで帰ろうとしているのでまたの機会にしてくださいませんか?」
「はぁあ?梨子が今日景吾と帰るって言ったら帰るのぉ!
ね?景吾ぉ、今日ね公園に来てるクレープ屋さんがぁ。カップル限定のラブラブクレープを売り出すんだってぇ。
梨子ぉ、それを景吾と食べたいなぁ?」
跡部に近付いて腕を絡めて上目遣い。
あざといねぇ。
「………っ。」
無言を貫き、地味にあらがう跡部。少々哀れである。
目が必死に助けを求めている。
「ではこの皆さんと行きませんか?跡部のご子息以外にも一緒に帰ろうと約束をしていたので。」
「えー!?二人きり………あ、やっぱりみんなで行こぅ?みんなが居た方が楽しいしぃ。」
否定しようとしていた富布里だが、跡部が本命であるが逆ハーを狙っている為、雅が提案したものの方が限りなく富布里のメリットが大きい。
すぐに考えを改め、みんなで行くことに納得した。
反面、みんなで、と言うところに跡部以外のメンバーの顔が引きつった。
どれだけ嫌がってるんだ。
遠目にしてたら可愛いよ富布里。喋ったら残念だけど。
「では富布里さん。本日の放課後4時に校門前まで来て下さいね?」
「はぁい!」
ルンルンと言った感じだ。ツインテールの髪が跳ねる。
当たったら絶対痛いんだぜ、あれ。
「鏑木ー…お前、なんであいつ誘うんだよ。」
「あ?ダメだった?」
「だってあいつの雰囲気…気分悪ぃぜ。」
「ンフフー…そっか。
富布里同行に反対の人挙手ー。」
スッと手が上がる。
滝と日吉以外。
「おふぅ…嫌われてるな…。」
嫌われ娘は他に来るのに、どうなるんだ。
「僕は雅の意見を尊重するよ。」
「流石お滝、好き。」
「はいはい。」
「どうせ俺の意見は無視するんでしょう。始めから同意しときますよ。」
「ヒヨちゃんッ好き!」
「キモイです。」
「俺様も好きだぜ雅!」
「はいはい。
まぁ、と言うわけで富布里も行くから。」
決定事項な、と雅は笑った。
楽しそうで何よりである。
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