大富豪or大貧民 | ナノ




「…杏奈。いつまであの女を特別扱いすればいい。」

跡部邸。
杏奈と跡部、と言うよりも氷帝レギュラー陣が集まって話し合いをしている。
話し合いと言うよりも雑談に近いものなのだけど。
何故わざわざここに集まっているのか、
それは杏奈以外にもマネが居るからだ。
その女子を避けるためにここにみんなが集まっていると言う事だ。

「えー?フフフ、ずっと…って言ったらどうする?」

跡部が怖い顔をしながら訴えていると言うのに杏奈はテーブルの上でトランプのタワーを作りながら答える。
只今一段目。

「断る。あいつの近くに寄るのも嫌なんだよ。臭い。なんだ?香水は付ければいいってもんじゃねーだろ。」

「確かに彼女は香水を人瓶被ってるのかって思うわ。」

只今二段目。

「あぁ、それ以上に部活中杏奈に触れることすら出来ないことが、なによりも辛ぇ。」

辛い、と苦しげに訴える。
今だって腕を伸ばせば触れることが出来るのに、

「景吾、今私の邪魔をしたら本当にずっと彼女を特別扱いしてもらうわよ。」

と、杏奈は今、触れることを許さない。
只今三段目。

「ッ………。」

「あぁ、景吾その顔そそるわよ。」

只今四段目。

「姫さん、その跡部の苛立ちが俺らに回ってくること忘れんといてや。」

「あら、ごめんなさいね。景吾駄目よ。人に当たったら。」

「……。」

只今五段………。

「あら、トランプが無くなっちゃった。」

トランプはジョーカーを入れても53枚。
今杏奈が作ろうとしていたのは六段のトランプピラミッド。
上から二段目を作ってる時点でカードが足りなくなった。
後一段だったのに…。

杏奈はその未完成なピラミッドを見つめながら皆に言った。

「ねぇ?私がわざわざ彼女を特別扱いして、お姫様扱いしてって言った理由、分かる?」

「どうせまた杏奈の気まぐれなんでしょー?もー、我儘すぎるよー。」

「ごめんなさいねぇ。でも、私が楽しんでる姿、好きでしょう?」

「うん、好きだCー。」

「フフフ、ありがとう。
でね。彼女、それなりに可愛いでしょう?でもね、もっと可愛くなる方法ってあるのよ。いえ、美しくなる方法かしら?」

「アーン?なんだ、もったいぶらすな。…!?」

「このピラミッドは彼女。少しずつ少しずつ、景吾達にちやほやされて有頂天になってるあの子。」

杏奈はピラミッドの傍から離れ一人掛けのソファーに座って居た跡部の膝の上に座った。

「それから…これからこれを、エイ!」

ピラミッドを作って余ってしまったカードを少しの間手で弄んだ後、未完成のピラミッドに向けて放り投げた。
未完成のピラミッドは一枚のカードの衝撃でバラバラと崩れ落ちた。

「うふふふふふふふ…アハハハハ!!
ね、景吾。人って持ち上げられて、それから突き落とされる。その瞬間こそ彼女は…いえ、人は一番美しい顔になるのよ。私はそれを見たいの。」

「じゃぁ、明日から杏奈を触ってもいいのか?」

「えぇ、今まで以上に私に甘えてもいいわよ。」

「俺的にはTPO弁えて欲しいんやけど、あの女の悔しがる顔を見てるならかまへんよ。」



―――――
―――

「景吾ぉ!」

彼女が跡部の名前を甘ったるしく呼ぶ。
鼻にかかったような甘えた声。風邪でも引いてんじゃねーの?

いつもなら冷たい感じで彼女をとりあえず受け入れていた跡部だったが、杏奈から許可をすでに得ている。
つまり杏奈と部活中イチャイチャしてもいいと言う事なので、跡部は遠慮なく杏奈の名を呼ぶ。

「杏奈!」

「なぁに?景吾。」

杏奈は跡部の声に反応し、跡部の傍へと駆け寄る。
そして跡部は駆け寄ってきた杏奈を抱きしめた。

「!?」

「フフ、だぁめ。今は部活中よ?はい、タオルとドリンク。」

「流石杏奈だ。サンキュ。」

「私はマネとしての仕事をしたまでよ。」

「ッ、ちょっと!!なんなの!?モブはしゃしゃり出てこないでよ!!景吾ぉ!?そんな女から貰ったドリンクなんか飲んだら駄目よぉ!!」

あり得ないあり得ない、跡部は自分に惚れているのでしょう。と言いたげに彼女はイチャコラする二人に突撃した。

「アーン?なんだテメェ、テメェみてぇな異臭のするやつ、呼んでねぇんだけどなぁ。なぁ?杏奈。」

「えぇ、そうね。あぁ…景吾、私なんだが気分が悪いわ。変な臭いに悪酔いしたのかも…。」

「俺は大変だ。おい、忍足。
俺様は杏奈の看病をする。あぁ、そうだ。異臭の元のテメェは退部だ。今すぐ消えろ、もう必要ねぇからな。」

「はいはーい。行ってきぃや。姫さんお大事にー。」

忍足は跡部と杏奈を見送って再び練習に戻る。
それを信じられないと言ったように彼女が忍足に突っかかる。

「侑士ぃ、どうしてぇ?私ぃ、景吾とぉ、杏奈ちゃんに嫌われることしちゃったのかなぁ。」

「ハァ?自分何言っとん。嫌われとる?そんな自意識過剰な事言っとるんやないで。自分は好かれても嫌われてもない、何も思われとらんわ。
それより自分何時までここに居るつもりなん?杏奈が自分を必要ないって言ったんやから存在価値のない奴はこっから居らんくなってや。テニス部の秩序を乱す自分は要らんねん。」





――――――――――
500000hit企画第42弾
春花様リクエスト「逆ハー狙い撃退/イタイ女の前で、ヒロインと跡部様がわざとイチャコラして見せ付ける」でした。

イチャコ…ラ?うん、イチャコライチャコラしてるしてる。

と言うか…忍足さん、なんでそこまででしゃばってんのさ…。
めっちゃ黒い台詞吐きよったぞ。
あっれー?不憫でもなく残念でもない忍足を目指したら…腹黒になった…。
ただの飄々としたイケメンを目指したのに……。


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