コート上の手品師丹神葉波は立海テニス部マネージャーをしています。
マネージャーはもう一人いますけど、その話は一度おいといて。
葉波は休憩に入ったレギュラーたちにドリンクを配るために近づいた。
「先輩!先輩!!」
手ぶらでぴょんぴょんと飛び跳ねる葉波。小動物と表現するのが最適だろう。
「なにかな?」
代表して幸村が反応した。
「新作の手品見てください!!ちゃらららららーちゃらららららーららー、」
ちゃらららららーと口でミュージックスタート。
葉波はポケットから大きめの白い布を取り出し、地面に白い布をギリギリつける位まで下げて広げる。
「スリー、ツー、ワン、プリーナ!!!」
最後の変な言葉を発して、白い布をバッとそこからどかすとそこには冷えているドリンクが人数分かごに入れられていた。
「「「おー!」」」
「おー、ついに習得したんか。流石俺の弟子じゃ。」
「はい!師匠の教え方が上手いんですよー!」
葉波と仁王は師弟関係。
始めは簡単な手品を教えてもらい、それをマスターしていった。
最近では手品なんて響きの単語ではなく、もうイリュージョンと形容するべきものとなっている。
「葉波…仁王の影響受けすぎてペテン師なんかになんなよぃ。」
「大丈夫ですよー。私が目指しているのはコート上の手品師ですよ!」
「丹神さん、あなたはコートには入りませんよね。」
「……柳生先輩、師匠の異名からもらったんですー!!ニュアンスが大切なんですよ!」
「丹神、最近入ったマネージャーの調子はどうだ?」
「うー…まだ不慣れな感じですー。」
「…そうか、」
「そうなんですー。
あ、そろそろ休憩終わりですね。次またドリンク作って届けますねー!」
「葉波ー、次はどんな手品見せてくれるんだ?」
「んー…赤也先輩はどんなのが見たいですか?」
「ドリンクネタが俺の中で最高なんだ!」
「分かりました!次もドリンクで手品しますね!!」
葉波は空になったボトルを回収して、再びドリンクを作るために部室に入る。
部室に入るとあからさまに不機嫌な顔をしている最近転校してきて、速攻でテニス部のマネージャーになった三年の先輩が居た。
片手には葉波が作ったボトルを片手に、立っていた。
「アンタ、ウザいのよ。だから、消えて?」
「え?」
先輩は片手に持っていたドリンクを自分の頭から被った。
「キャァアアアアアアアア!!!」
けたたましい叫び声をあげた。
その叫び声に反応したレギュラー陣が部室に入ってきた。
幸村を筆頭に入ってきた。
その姿を確認した先輩は幸村に抱きついた。
「精市ッみんな!!」
「……どうしたの?この状況を説明してくれるかな?」
「葉波ちゃんがぁ…私が作ったドリンクをー、『お前なんかいらない』とか言いながらかけてきたのッ
実はさっき作ったドリンクはぁ、私が作ったのでぇ葉波ちゃん仕事私に押し付けてくるのぉ…助けてぇ。みんなぁ。」
「………そうなの?葉波?」
「え…え?…………私、私はッそんな…。」
突然の出来事で頭がついていってない。
ここでどもっていたら疑われることに拍車がかかってしまうと言うのに、
「ちょーっとええかの?葉波は無実じゃ。」
仁王が葉波を庇うように発言。
「それはなんでかな?」
「その濡れとるのドリンクじゃないぜよ?」
「え…?」
「ただの水ぜよ。じゃろ?葉波。」
「師匠…はい、それは水です。次の手品のネタだったんです。
まず皆さんにただの水のボトルを渡して、その後に私が指を鳴らして本当のドリンクに変化するはずだったんです……。」
先輩の持っているボトルを幸村は奪って中にまだ残っていた水滴を自分の口の中に零した。
「…ホントだ。ねぇ、君何のつもりかな?俺に嘘、ついたの?」
「ち、違うのぉ!嘘じゃないのぉ!!」
「……そう、葉波気を付けてね?」
「は、はい!」
ここからしばらくの間、先輩による被害者ぶりっ子が始まった。
例えば、葉波の筆箱の中に入っていたカッターナイフを持ち出し、「切りつけられた!!」と訴えた。だが、それは手品の小道具だったため刃がプラスチックでできていたり、
葉波のロッカーに自分の教科書を入れ「盗まれた!」と騒いで葉波に濡れ衣を着せようとしたが、いつの間にか自分の机の中に入っていたりして、
全く成功しなかった。
ストレスが溜まってきた先輩。
イライラして先輩は葉波を屋上に呼び出した。
「本当にウザいのよアンタァ!!!」
「うー…そんなこと言われても……。」
「私の邪魔ばっかりしてぇ!お姫様は私なのぉ!モブは黙ってなさいよ!!」
「モブ?……!?先輩なんで私が最近仲良くなった鳩さんの名前知ってるんですか!?」
「はぁ?」
「もしかして先輩も仲良かったんですか!?会います?スリー、ツー、ワン、プリーナ!!」
掛け声とともに一匹の鳩が先輩のポケットから登場した。
「キャッ何!?」
「モブちゃんですよー!ねー?」
[くるっぽー]
ブハッハハ!!
「ん?先輩笑いました?」
「はァ?笑うわけないでしょ!?
ほんと邪魔ぁ!モブちゃんとか意味わかんないのぉ、モブはアンタよ、アンタァ。
なんでアンタの周りばっかり集まってんのぉ?意味わかんないぃ。モブはモブらしく私の引き立て役になってなさいよぉ。
テニス部のみんなを独り占めしていいのはぁ、お姫様の私だけなんだからねぇ?」
「「「アハハハハハハハハハ!!!!!」」」
「「!?」」
大きな笑い声が入口の影から聞こえてきた。
二人で振り向いてみると、そこにはテニス部レギュラー陣が居た。
「し、師匠ぉ!!!」
先輩にきついことを言われ少々傷ついていた葉波が仁王に飛びついた。
「よーしよし、怖かったなぁ。もう大丈夫ぜよ。」
「み、みんな、何で…ここに…いつからぁッ!?」
先輩が分かりやすく驚いている。
此処に居るのは自分と葉波だけだと思っていて聞かれたくないことまで聞かれた可能性もあるから。
「貴様と丹神がここに来る前だ。貴様が葉波を呼び出したことは知っていた。
そして屋上に呼び出す確率98%。」
「お前の発言一々面白すぎ、まだ隠れてる間に笑っちまったぜぃ。」
「や…そんなっ。」
「もう、いいよ。お前要らない。だからさ、お前が消えなよ。」
「そうじゃな、俺も幸村に同意じゃ。
あと、お前さん俺らの事物を盗ってファンクラブに売っとるじゃろ?」
「どうして!?」
確かに部室から盗んで売っていた。
でも男子の目、葉波の目だけは気を付けていた。
なのに何でバレた?
「そんなん手品師が取り返してくれたから大分昔から分かっとったぜよ。」
ファンクラブに売りさばいたもの。
例えば、タオルにシャーペン、消しゴムなど。
売る方も売る方だが、買う方も買う方である。
その事実を知った葉波が得意の手品で売られた私物を見つけては偽物と入れ替えて、
という作業を誰にもばれないように行っていたりした。
「また、アンタはぁッ私の邪魔ばっかりしてぇ!!手品師?ばっかじゃない!?」
「葉波の侮辱は許さんぜよ。モブ女。」
「!?」
「モブ女覚えときんしゃい。ペテン師と手品師が組んだらそれ以上に厄介なもんはないんよ?」
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200000hit企画第14弾
悠P様リクエスト「庭球のギャグで、悪女退治」でした。
キャラが立ってない!!
どうしてだ!?もう少し悪女もウザくしたかったし、主ももっと可愛くしたかった!!なのになんで!?
練詠はこの2キャラを書くのは苦手なのか!?ああ!苦手さ!!←
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