俺はお前で、 | ナノ

お前は君と、 第20話
(20/23) 

「なんで、そんな酷い事…友哉に、するんじゃぁ……!使わん、言うたがぁ!!」

酷い事、それは先ほどから行われているリンチの事ともいえるし、
友哉が倒れるきっかけとなった廃材の鉄パイプで頭を殴った事。

倒れた友哉に対して未だに暴力は途切れない。
さっき以上に酷くなっている。鉄パイプに金属バット何でもありの最低行為。

「あー?使わないつったのは俺だけ。実際俺は使ってねぇしぃ。そもそも守本との約束なんて守る必要性ねぇし。
あんなやつと関わって災難だなぁ、仁王クン?」

「俺は、友哉と関わって災難だなんて思っとらん!」

「ハッ、どうだか。」


「「それは俺達もだ。」」


「「「「「!?」」」」」

声がした。
友哉でもなく仁王でもなく元舎弟でもなく友哉を殴っている奴らでもなく仁王を殴っている奴らでもない。
完璧な第三者が7人。

「誰だテメェ等!!」

「正義の味方って言っておくよ。俺達正体がばれると厄介なんだ。」
「だからこそこうやってサングラスとマスクで顔を隠しているのだろう。守本、助けに来たぞ。」
「この様に悪が蔓延っているのか、たるんどる!!」
「全く、こんなにも違反者がいるものなのですね。」
「じゃー、ちゃちゃっと潰しちゃいましょうよぅ。」
「よー!たかりに来たぜ!!」
「お前、今度はおごってやれよ。」

「皆、いくよ!!ガムとレッドは仁王の救出の後友哉の元舎弟の拘束。その他は、思う存分暴れなよ。」

「「「イエッサー!!!」」」

第三勢力がバッタバッタと不良を片付けていく。
得物にだって恐怖しない。逆に挑んで回避し、そして相手を沈める。

その第三勢力のリーダーらしき人が友哉に声をかけた。

「やぁ友哉、元気してる?来ちゃった。」

語尾にハートが見え隠れするような口調でリーダーらしき人は言った。

「テメェは俺の彼女か…。なんで、来やがった…?」

「バレなきゃいいんだよ。
ね、君今立つこそすらままならないでしょ。」

「あぁ、そうだな…正直、喋るのも辛ぇ…だけど一発決めてぇ奴居んだよ。」

「だろうね。
だからそれ、手伝ってあげるよ。」

リーダー的な人は微笑んだと思う。
そして次の瞬間友哉の感覚が無くなった。
具体的には痛覚がなくなったのだ。

「な、にを…した?」

「イップスの応用版。触覚を無くしたからついでに痛覚も無くなってるんだけど、立てるでしょ?」

立ってみなよ、と友哉に促す。
友哉は慣れない感覚でその場に立ち上がった。

「ッ……立てた…。」

「もう慣れた?うん、一つだけ言っておくよ。痛くないって言っても怪我をしてるのは変わりないから。動けば動くだけ怪我を悪化させていることになるから。」

「…分かった。」

「うん…あ、これ使う?パイプと金属バッドー。」

「あー……両方もらうわ。」

右手でパイプを受けとって、左手で金属バッドを受けとった。
友哉は元舎弟に一歩一歩近づいていく。

本来なら妨げになるような不良共が居るはずなのだが、
いや、居たのだが…鬼に金棒と言うべきか。得物を持った友哉は鬼そのものと言ってもいいだろう。

友哉が歩いた後には地獄図絵しか残っていなかった。

大分、第三勢力で削られていたと言うこともあるが…。
そして残る一人は元舎弟。
元舎弟は第三勢力のガムとワカメに拘束され逃げることが出来ない状態にある。

「よう、元舎弟。どうだ?テメェの言い分通り俺は一方的にリンチを受けてやったぜ?」

「なんで、なんで歩けんだよッなんでだよ!!」

「さぁなぁ、俺も不思議だぜ?だって歩いてる感触も手に何かを握ってる感触も地に足を付けてる感触も何にもないんだからよぉ。」

「ばっ、化け物め!!化け物め!!化け物めぇええ!!!」

「あぁそれ…聞き飽きたぜ。散々よぉ俺を破壊神だの喧嘩人形だの殺戮人形だの鬼だの好き勝手言ってよぉ。
それが嫌いだったかと言われたら嘘にはなるなぁ。案外気に入ってっぜ?だってそうだろう?俺が化け物みてぇに強くて怖いからそう呼ぶんだろ?まぁ、雑談はこれくらいにしようか。
ここで質問だ。お前はどっちで殴られたい?鉄パイプ?それとも金属バッド?」

カラカラカラ、カラン、コツン、コツ、と存在感をアピールさせる。

「ッどっちも嫌に決まってんだろうが!!」

嫌に決まっている。友哉にそんなもので攻撃されたらたまったものではない。
完全拒否だ。
だからと言って友哉は「はいそうですか。」と答える奴でもなく。

「あぁ、そうかそうか…正直者のテメェにはご褒美をやんなきゃなぁ。鉄パイプでも金属バッドでも無くて、俺の拳を一発腹に決めさせてもらおうか。
ただなぁ、今の俺は全力しか出せねぇし、感覚も分かんねぇから手加減出来ねぇんだよ。その辺は勘弁な。」

両手に持っていた得物をパッと手離し、元舎弟の腹を目がけて構える。

「なッい、や…ッ痛いのは嫌痛いのは嫌痛いのは嫌痛いのは嫌だぁああああ!!」

友哉からの殺気しか感じとれなかった元舎弟はまるで小学生が注射を嫌がる様な御託を並べて友哉の攻撃から身を守ろうとする。
しかし、拘束されているためそれもままならない。

「え?お腹痛いのか?また下したか?後から正露丸持って来てやるよ。俺ってば、優しいなぁあああ!!!」

友哉なりの心遣いを見せた後思いっきり、力任せに腹部を拳で射抜く。
その時には拘束していた手を離されていたようで元舎弟は数メートル後ろまで吹っ飛んだ。

第三勢力はその光景を眺め、拍手を送った。
それからすぐ友哉はバタリと地面に突っ伏した。

「「友哉!?」」
「「守本!!」」

慌ててかけよる第三勢力。

「はぁ…テメェ等、何でここに居んだよ。俺はお前らとは縁を切ったはずなんだけどな。」

「フフフ、エンガチョしたぐらいで絶交できるなんて思ってるの小学生ぐらいだよ。」

「あぁ…全くだ。人の縁は簡単には切れないんだぞ。」

「怪我人をバカにするかなぁ普通。」

「するよ。だって君と俺、友達じゃないか。どんな状態でも普通に接するよ。俺は、」

「…友達、か――――……。」

「さぁ、救急車呼ぶからね。…え?ちょ、友哉!?」


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