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「友哉さん!来てくれたんですね!!」
放課後になって謙也に連れられテニスコートへ登場した友哉。
出迎えてくれたのは財前だった。
「あぁ、約束したしな。」
「光に…しっぽが見える気ぃする…。」
忠犬という表記がぴったりな財前なう。
「今日の練習なにすんだ?」
「試合形式の練習です。」
「へー、財前はシングルスか?」
「いえ、謙也さんとダブルスです。」
「謙也と組んでんのか…大変だな。」
「ホンマですわ。」
「なんでやねん!!」
「冗談冗談、俺お前らがまともに練習してる所は見たことねぇからな。
ほら、早く試合っぷり見せてくれよ。」
「友哉さんがそう言うなら…謙也さん、さっさと相手捕まえて試合しますよ。」
「…こんな光見とぅないでッ!!」
謙也の叫びもむなしくやる気満々な財前に腕を引かれてコートの中へ。
間もなくして試合が始まった。
「ふーん…楽しそうにテニス出来んじゃん。」
…………。
「守本…君。」
「ん?」
謙也達の試合を見ていた友哉だが名前を呼ばれ振り返る。
振り返れば図体の大きい千歳が居た。
「あ、俺を担いで木に縛りつけた奴だ。」
敵意むき出しで、嫌味MAXだ。
「……すまんかったばい。」
腰を90°に曲げて謝罪。
そんな謝罪を冷たい目で見つめている。
「…謙也には、ちゃんと謝ったのか?」
「あい。」
「謙也はお前を許したのか?」
「許して…もらえた、と…。」
「そうか、なら俺も許しておこうかな。」
「ホンマ!?」
「あぁ、謙也が許したなら俺がいつまでも許さないっつーことは出来ないだろ。
あの時お前らは俺を謙也としていたぶってくれた。俺は身体的に痛かっただけだ。そんなのはすぐ治る。
けどな、謙也は心が痛めつけられた。
分かるか?心はなかなか治んねーんだぜ?下手したら一生治んねぇ。
ここに来て…さ、謙也が楽しそうにテニスを続けてて…それだけでも俺は、嬉しかったな。
けどな!!お前に言っても意味ないと思うがな!!言うとだな!!白石は絶対ぇ許さねぇ!!!」
「……それ、矛盾しとるばい。謙也は白石のことも許しとったとよ。」
「……昔の自分を見てるようで嫌なんだよ。
お前に話す義務はないが、俺は昔白石みたいなことをしちまったんだよ。
取り返しのつかないことをしたんだよ、俺のせいで一人の幼馴染の人生が狂ったんだ。俺は助けられる力がありながら助けるってことはしなかった。
だから俺はまだ、自分のこと許せてねぇ。だから白石も許せねぇ。」
「………。」
「随分と…自分本位な考え方しとるんやな守本。」
千歳と話していたはずが白石が乱入してきた。
「ぁあ?んだよ白石、盗み聞きか?」
「そんな趣味悪いことせんわ。俺は千歳に用があったんや。」
「何?」
「試合や、コートに入り。」
「分かったばい。
…守本、許してくれてサンキューったい!!」
「おうおう、試合頑張ってこい。」
千歳がコートに入りここに残されたのは友哉と白石。
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