マフラー半分こ | ナノ
 



※リョーマさんと桜乃は高校生です


桜乃は電車が来るのをベンチに座って待っていた。
唐突に冷たい風が吹いて肩が震えた。

「寒くない、今日?」

横から声がして振り向くと、そこには越前がいた。

「リョーマくん!今日は部活じゃないの?」

「休みだってさ。竜崎はこの電車乗るの?」

「うん、そうだよ」

「じゃあ俺もこれで帰ろ」

少し会話を交わすと、また冷たい風。
びゅんと通り過ぎた風に耳が痛くなった。

「さむ…」

そう呟いて越前は白い息を吐いた。

「最近寒いよね」

「ほんとにね、竜崎は風邪ひいてない?」

「私は平気だよ。リョーマくんも気をつけてね」

当たり障りのない会話を繰り返して
ふと、沈黙が訪れた。
高校生になって、クラスの幅が広がり、
互いの部活も忙しくなったせいか
最近ちゃんと会話していなかったせいだと桜乃は思った。

「竜崎、隣座ってもいい?」

何を話そうか必死に考えていた桜乃は
越前のその言葉で我に返った。
そこでようやく越前が今まで立ちっぱなしで話していたことに気付いた。

「あ、ごめんね、私気付けなくて…」

慌ててベンチの端に移動した。
「いいよ」とちょっと笑いながら越前は座った。

「あとさ、」

「なぁに?」

「それ、半分貸してくんない?」

越前が指さしたのは、桜乃の首に巻かれているピンク色のマフラー。
桜乃は頷いて、マフラーを外そうそした。
しかし、その行動を制御し、越前は桜乃にぐっと近づいた。

「半分でいいって」

少しだけ垂れていたマフラーを手に取り、自分の首にも巻きつける。
ほとんど抱き合っているような距離でマフラーを結んだ。

「リョーマくん?!」

「うん、竜崎のマフラー長くていいね」
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(これってなんていうか知ってる?)
(ううん?)
(恋人巻きっていうんだよ)
(え、じゃあ…)
(俺と竜崎は恋人ってことでいい?)


学校帰りに電車待ちのホームにて。
書いた後に青学は中高一貫だから電車通学ではないことに気付きました(汗)

お題配布元:last life

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