ニート×大学生04
俺は謙也さんと一緒におってええんですか?
俺は謙也さんがこのままでほんまにええんかな?
昨日からずっとその答えを探していて一睡もしてない。レポートをまとめなきゃいけないというのもあったけど、そっちには全く集中できず、結局半分も書くことができなかった。しかも今日に限って、1限から講義が入っている。全部投げ出してしまいたいけど、そういうわけにもいかない。だらだらと着替えを済ませて朝食は食べずに部屋を出る。
謙也さんは、去年まで一緒に寝てたベッドじゃなく、居間のソファで気難しい顔をして寝てた。
その顔を見て、謙也さんは何考えてるんやろか、なんてまた新たな疑問を抱いてしまった。
***
「…ぜん、ざいぜん、おい」
体を揺すられる感覚がして、目を開くと、何故か切原が俺の顔を覗き込んでいた。
「あ、起きた」
「切原?何しとんの?」
「レポートの楽な書き方教えてもらおうと思ったら、お前いきなり倒れんだもん、びっくりしたぜ?」
「は?」
切原の話によると、午前の講義が終わり、切原に名前を呼ばれて立ち上がった俺はそのまま倒れたらしい。
ぶっちゃけ、講義が終わった記憶も、切原に名前を呼ばれた記憶もないんやけど…。
「昨日寝なかっただけなんやけどなあ…」
「はあ?そんなん倒れるに決まってんだろ!」
「一日寝ないことなんて、今までも結構あったで」
「じゃあいつもより疲れてんじゃねーの?最近どうなんだよ、忍足サン」
切原は、俺と謙也さんの関係を知ってる。謙也さんと喧嘩したときなんかは切原に八つ当たりして、それでも切原はなんだかんだでいつも背中を押してくれる。切原と話してると、嫌な気持ちも少なくなる。
本人には絶対言ってやらんけど、多分一番信頼しとる友人。
だけど、今回ばかりは切原に頼るわけにはいかない気がして俺は口を閉じた。
今俺が何か言えば、全部謙也さんへの不満になってしまう気がして。
「何もないならいいけどよ、言わねえとわかんねえこともあるぞ」
「ん?」
「自分の推測だけで、相手の気持ち決め付けちゃだめだってこと」
そう言って切原は部屋から出て行った。多分俺に考える時間をくれたんだと思う。中学のときに比べて、切原はだいぶ気を遣ってくれる奴になったと思う。ほんまありがたい。
心の中で礼を言った。
もしかして、何も変われてないのは俺だけなのかもしれへん。
←
|