ため息またひとつ | ナノ


ため息またひとつ



こいつは謙也のことがめっちゃ好きやのに、謙也の好きな奴は別に居って、しかも謙也の方はその好きな奴とうまくいってるなんて、ちょっとひどすぎるんとちゃう?なんて思う。



「ユウジさん」

「ん?」

「謙也さん、彼女居ったんすね」

「…あー、なんや、昨日告られたらしいで」

「謙也さんの、好きだった人に?」


財前の顔は見ないようにして頷いた。やって謙也が付き合い出した女子を好きになるずっと前から、財前は謙也を好きだったから。こいつは今、どう思ってるんやろ。そんなんわからんし、俺が財前にしてやることは何もないんやけど。


もし俺が、誰か本気で男を好きになって(小春は含まん、別格やから)でも男が好きって時点で絶対叶わんって思ってて、挙げ句の果てに相手に彼女なんかできたら、何かしらわかるのかもしれへんけど、生憎そんな状況になったことはあらへん。

でも財前が(あの超絶クールで、自分の恋愛事情なんて口が裂けても言わなそうな財前が)、謙也を好きだってことを俺に明かしてくれたのは、何かしら理由があるはずや。やから何もできへん自分に、多少なりとも苛々した。それこそ、俺のポジションが謙也だったらうまい具合に財前を慰めて、前に進ませてやるんやろな。本間にうまくいかへん。


「大丈夫か?」

「何がっすか?」

「えっとな、ほら、部活とかお前今まで通りにできるん?」

「…今まで通りやないとアカンでしょ。あの人に気持ち伝えたわけでもないんやから」


財前を見ると、自嘲したように笑っとった。
さっきも言ったけど、俺が財前にすることは何もない。俺が何かしたところで変わることだってあらへん。それでもこいつが本間にアカンくなりそうやったらフォローしてやろうと思った。

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title by Aコース




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