レアンドルが帰ってきた。
その言葉を聞いた時、真っ先にレアンドルの元へ駆けつけた。
しかし、私を待っていたのはレアンドルと、可愛い一人の女の子。
「あぁ、名前。ただいま」
「お、おかえりなさい…。そ、その子は…?」
「マリーベルっていいます。宜しくね」
絶望が私を襲った。
まさか。そんな。レアンドルが浮気だなんて。
私とレアンドルは恋仲だ。
なのに、レアンドルは、彼女を、マリーベルを…?
「誤解だぞ名前。マリーベルとはなんの関係もない」
「そ、う…なの…?」
少しだけ、安心した。
だけど、そんなの一時で、私はすぐにレアンドルがマリーベルを愛している事に気づいてしまった。
会えていなかった時間が大きすぎた。
レアンドルは、彼は、私を愛していない。
本当は彼はそんな人ではない。それなのに、あぁ、運命は残酷だ。
月夜が草木を照らす夜。
レアンドルがたまたま外に出て空を仰いでいたので、後ろ髪を引かれつつも隣に腰をかけた。
「レアンドル」
「名前…どうした?」
言え。言うんだ。
そして、わたしは。
「愛してる」
そう言った刹那、静寂が私たちを包んだ。
レアンドルの息をのむ空気が伝わる。
彼は、同じように愛してるとは言ってはくれない。
それで、それで良いのだ。
「大丈夫。あなたがマリーベルを愛している事はわかっているわ」
「名前…っ」
「ねえ、レアンドル。お願い」
「っ何だ…?」
「キス、して」
月明かりに照らされる美しいレアンドル。
漆黒のさらりとした黒髪。
きらりと輝く綺麗な瞳。
私は、あなたの全てに惚れているの。
レアンドルは少し困惑した表情をみせたけれど、私の肩を抱き、静かに唇を落としてくれた。
数日後、レアンドルとマリーベルはパリへと出発した。
「名前、本当にいいのかい…?」
「えぇ。いいの…」
レアンドルが、幸せになれるなら。
夜、遺書だけを残し、私は静かに寝床を抜け出し、近くの湖へ向かった。
身投げだ。
レアンドルに愛してもらえない人生など要らない。
あぁレアンドル。先に逝って待っています。
愛しているわ、レアンドル。誰よりも、ずっと。いつまでも。
貴方を想いながら逝けること、私は幸せに想います。
名前、愛してる。
そう、レアンドルが言った様な、聞こえた様な、気がした。