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頭を鈍器で思い切り殴られた気分だった。


言われたことも理解出来ないまま数分の間立ち尽くしているとやっと頭が理解に追いついた。

なんだ、そう言うことか。


分かった瞬間やるせない気持ちが溢れ出してその場を走り去る。
振り返ってもさっきまで話していた相手は追いかけてこなかった。


嗚呼、嗚呼。今日は何て最低な日なんだろう。


無我夢中で走り辿り着いたのは屋上だった。
いつも、私がサボりをする場所。
今日も今日とてサボりでもしようか、なんて不良紛いな事を考えながらいつもの定位置までふらふらと歩く。
この定位置は給水タンクの裏側だから滅多に人が来ないし見つかることも無い。

給水タンクに寄りかかって力無く座り込んだ。
ぽろぽろと塩気を含んだ涙が目から流れ落ちる。
だけどそんなの、どうでもよかった。
私は、あの男に利用されてただけなのだ。



始まりは相手が私に告白した事からだった。
それまで私は彼を見掛ける程度で話をしたこともなければちゃんと顔を合わせる事も無かった。
所謂、見掛ける程度。それ以上でもそれ以下でも無い存在。



だけどその日はそんな関係が終わった日だった。
体育館裏で告白されて、断ろうと思ったけど今にも死にそうな形相でお願いだ、付き合ってくれ。と懇願され渋々ながらも了承し付き合い始めた。
今までの微妙な関係は終わり恋人同士と言う関係になった。


勿論最初は戸惑ったけど楽しかったし今では掛け替えのない存在になってた。
だが、恋人になって一カ月。その関係は呆気なく終止符を打った。

打ったのは紛れもない彼だった。
それが今日。つい先ほどの出来事だ。

そこでやっと理解する。私は彼に利用されてただけなのだと。


やはり、好きでも無いのに付き合うんじゃ無かった。
いくら後悔しても最早後の祭り。
ただただ心の傷が抉られただけだった。



意味もなく、かと言って止まることもしない涙を流し続けているとギィ、と屋上の扉が開く音がした。
誰かサボりに来たのだろう。
何とも形容しがたい足音が此方へ近付いてくる。
泣き止む隙も無いまま給水タンクから顔を覗かせたのは同じクラスの笹山君だった。

しまった、泣き顔を見られてしまった。

脳が早く立ち去らないと、と警報を鳴らすがさっき全力で走ったせいか立ち上がれなくなっていた。

その間に笹山君は私の横に座ると頭の後ろで腕を組んで空を仰ぐ。


「南羽?」
「な、んで…」


突然彼の口から飛び出した言葉はついさっきまで恋人だった彼の名だった。
何故、笹山君が知っているのだろうか。
私の疑問に答えるように松野君は話し始めた。


「アイツ、結構前から女遊び酷いんだ。まぁ…って言っても一カ月くらい付き合うだけだけど」
「そ、うなんだ…」


初めて知った。
私は結局遊びだったのか。分かったつもりではいたけどやはり悲しかった。

俯いていると上を見ていた笹山君が私の顔を覗き込んで言った。


「みょうじ、南羽にフられたんでしょ?」
「う゛。…そこはオブラートに包もうよ笹山君…」
「だって事実じゃん」


確かに事実だが核心を突かれると心に罅が入る。

また涙が出て来そうなところで笹山君はまた口を開いた。














「じゃあ、僕と付き合おうか」








世界が、一転した。
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