ひゅ、と喉が音を立てるのが分かった。 吸い込まれる様な綺麗な瞳に胸が高鳴る。 その綺麗な眼の持ち主は臙脂色の彼岸花の柄が入った手ぬぐいを片手で拾い私に向ける。 「これ、君のでしょ?」 少し低めの、癒し系の様な心地の良い声が鼓膜を揺らす。 中性的な顔立ちに絹のような金色の髪の毛。そして真っ赤な目。にこりとはにかむ姿は誰が見ても美しいと感嘆の声を漏らすであろう。 「あ、ありがとうございます」 火照る頬を抑え白と臙脂のハンカチを受け取る。その時に相手と当たった指に熱が集まる。 じゃあ僕はこれでと踵を返す背中に声を掛けたくなったが喉が仕事をしてくれない。あぁ、あの人が行ってしまう。 金色が人混みに紛れやがて見えなくなる。それと同時に肩を落す。 まだ熱が集まっている顔に手を当て冷やそうと試みるがあまり熱は逃げなかった。 (…また、会えるかな) 頭の中はさっき出会った金髪の人でいっぱいだ。所謂、一目惚れ。 まさか自分が一目惚れをするなんて誰が思うだろうか。 いや、あの人が悪いのだ。あんなに綺麗な目をしているから。 理不尽な責任転嫁をしながら帰路に着く。また、あの人に会えないだろうか。 ( ← ‖戻る‖ → ) |