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ゴロゴロと轟音を奏でる空。

地へ容赦なく降り注ぐ大雨。

開けた裏山の頂上。


そこに忍術学園にとって数人目の天女であるみょうじなまえは両手を広げ天を仰いでいた。




「さあ神様!私の願いを言うわ!どうか!どうか私の命と引き替えに忍術学園に平穏をもたらして頂戴!もう、天女なんてトリップさせないで!お願いだから!もう彼らには被害をもたらさないで!!!」



大粒の涙を流しながら泣き叫ぶなまえに応えるかの様に雷が轟き光が一直線になまえへと向かう。
なまえは恍惚の笑みを浮かべ静かに目を閉じ、次の瞬間には雷に身を包まれていた。

















「…何?これ以上天女が来ない様に出来るだと?」


怪訝そうに眉を寄せながら立花仙蔵は呟いた。
肯定を示す様になまえは微笑む。
それが不快だったのか、仙蔵は眉間に皺を寄せた。


「ふん、どうせ天女とやらの戯言だろう?貴様の話に割く時間は無い。」
「そう。じゃあ、私が居なくなって、天女がもう来なければ、私の話信じてくださいね」


光の無い、闇を孕んだなまえの瞳に、仙蔵は一寸の恐怖を覚えつつも、それを隠すようにふん、と鼻を鳴らしその場を去った。










「そう言えば、何人目だかの天女、ここ最近姿を見ないな」


食堂でいつもの五人と食事を取っている時、小平太が顔をあげ、口を開いた。
あまり大きな声では無かったのだが、食堂に居た忍たま達が少しだけ反応を示したのが見える。

ハッとした様に今度は伊作が口を開く。

「確かに…。もしかして誰かが…?いや、でもそれなら次の天女が振ってくるはず…」


長次は目を閉じ、文次郎は苦虫を噛み潰したような表情をし、留三郎は口を開いたまま動かない。


皆、真相が分からないと言った感じで、色々口論していたが、私は彼女が居なくなった理由を知っている。
だが、今それを言う気には何故かならず、ただひたすら食物を口に運ぶことしかしなかった。


「仙蔵、どう思う?」


不意に、隣に居た文次郎から声をかけられる。


「さあな。私は興味がない。もう天女が振ってこないのならばそれで良いではないか」


ぶっきらぼうに言うと、皆それもそうだな、と納得し各々食事を再開した。






その晩、同室の文次郎を起こさぬようこっそりと部屋を出て裏山へと向かった。
先日話された天女の話が気になったのだ。
もしかしたら文次郎は起きていたかもしれないな。
私のあとを複数の気配が追ってくる。
それに気付かぬふりをして山頂へと足を速めた。


開けた山頂には、見覚えのある人物が転がっていた。
全身に火傷を負い、安らかな表情で横たわっている。



「…ふん、あの戯言は事実だったのか。馬鹿め」


もう数えるのも億劫になる数人目の天女の亡骸を見下ろし、ぽつりと呟く。


「自分の命と引き替えに天女を現れさせなくなるなど、信じていなかったが…」


五人の気配がすぐそこにあるのを確認し、説明でもするように独り言を吐いた。


「貴様は、今までの天女と違ったのだな」









後日、裏山の頂上に一つの墓が建てられた。
今までの天女の質素な墓とはまるで別の、ちゃんとした墓が。
そこには沢山の花が添えられていて、全く忍たま達も現金な奴だと自嘲も込めた笑いを零す。

今まで被害を与えられていた天女と同類の異人に助けられるなど、皮肉なものだと薄ら笑いを浮かべながら、彼女が育てていた恐らく好きだったのであろう名も知らぬ花を静かに墓の前に添えた。
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