私は気に入った曲をしばらく優先的に聴くタイプの人間だ。時折あいだに他の曲挟むけれど、ついつい気に入ったものを聞きがちである。そしてアナログな機器も結構好きだ。最新のものは最新のものの良さがあるけれど、わかったうえで選んでいる。しかし、ずっと気に入って使っていた有線イヤホンがついに断線してしまったので、この機会にとBluetoothイヤホンに変えたのだった。なるほど音もいいし、これはこれで悪くない。
最近大学で音楽の趣味が同じで仲良くなった桐嶋くんはごつめのヘッドフォン派だ。彼の好む服にも似合っているし、ヘッドフォンも私は好きだけれど、外を歩くには些か危ないので家の中でか、桐嶋くんから借りてしか使わない。

「桐嶋くんおはよ〜」
「おはよう。あれ、イヤホン変えたの?」
「そうなの!前のやつ断線しちゃって」
「そうなんだ。それでワイヤレスに浮気したんだね」
「いや言い方」

 おもわずそう突っ込めば小さく声をあげて笑う。なんだか今日は朝からご機嫌だ。「よかったらあとで少し聴かせてよ。イヤホンも着にはなってるんだよね」と話しながら桐嶋くんはヘッドフォンを首に掛けた。今日もよく似合ってるな……。そのまま喋りながら同じ教室へと向かう。今日は私と桐嶋くんが同じ講義で、遠野くんが次の講義から合流するらしい。一人なのは珍しいなと思ったんだ。ということは、(もちろん講義はちゃんと受けるけど)少しの間ふたりきりで居られるのか。なんだかちょっぴり嬉しいな。遠野くんも悪い人ではないけれど、時々意地悪なことを言ったりしたりしてくるから少し心臓に悪い。
 そんなことを考えてぼんやりしていたら講義は終わっていて、時間の流れの速さに驚いた。荷物をまとめていると桐嶋くんがこちらへと来てくれて、「日和、少し買い物に寄ってから来るんだって。カフェテリアで待ってようよ」と声をかけてくれた。

「そうだ、イヤホンつかう?」

 一緒に遠野くんを待つ間、私はカフェオレ、桐嶋くんはアイスティーを飲みながら互いのイヤホンとヘッドホンを交換してオススメの曲を聞かせあう。やっぱりヘッドホンの重低音もすきだな。なんとなく視線を下に落とすと、指がとんとんとテーブルを叩いて、桐嶋くんを見るとなにかぱくぱくと口を動かしている。

「なに?」

 ヘッドホンを外すと桐嶋くんの視線も外れた。ほんのり顔も赤く見える。「……なんでもない」…もう一度言ってくれないかな、好きって、何が?おしえてよ、桐嶋くん。

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