最近はそれを、はっきりと感じ取れるようになってしまった。心に広がるあきらかに赤いこの感情は、血中を逆流して俺の眼球にまで到達する。そうして、瞳の膜が透明性を持った赤で染められて、俺は暫くその色味でしか、世界を見る事が出来なくなる。

「何度見ても良い男だなあ、あそこの店主の息子さんは」
「……」
「彼のせいで、毎週ここに足を運ぶ羽目になっているよ私」
「………」
「ねえ獪岳?来週も一緒に来ようよ」

串に刺さった団子を一個半咥え込んだ彼女の視線は、もう別の男を物色していた。瞳孔がぎゅうんと丸くなって突き抜けたこの人の可愛らしさは、俺に一切向けられない。

「また鍛錬付き合ってくれるんなら、良いですよ」

「うん」今の頷きには半分、好みの男を発見した際の跳ねた色味が含まれている。団子に乗ったイチゴの餡が下唇に乗って光沢をつくっている。彼女はそれを上手に舐めとって、俺はそれを横目でしっかりと捉えて、それから名前先輩の長い睫毛のむかう先に視線を合わせる。「格好良いな、彼」どこが。あんな男のどこが。「上背があって良い」禍々しく紫色をした空は、俺と彼女が並んで歩いている時以外は現れない。



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