「それで」
「それでってなに」
「どういう風に断ったか。一字一句間違わずに言ってみてくれるだろうか」
「いや別に…」
「そう言ったのか」
「違うよ。付き合っている人が居るからって言った」
「“付き合っている人が居るから”と言った」
「……」
「なんだ」
「煉獄怖いよ。事情聴取みたい」
「その通りだ。それで終わりか?」
「うん」
「嘘を付くな」
「……」
「その後、汚い言葉を吐かれただろう」
「知ってるなら聞かなくて良くない」
「事実を確認したかったまでだ。もういい。君の反応で大方理解した」
「え、ちょっと待って、どこ行くの」
「その男の所だ。君は付いて来ないでくれ」
「なんで、行って何するの。行かなくていい、私気にしてないから」
「俺の気に触った」
「やめよう煉獄。相手先輩だし」
「だから俺が負けるとでも?」
「なに負けるって。なにしに行くの」
「話すだけだ手は出さない」
「何を話すの」
「名前には教えられない」
「なんで」

目の前でドアを思いきり閉められた。私は煉獄の部屋に取り残されて、閉まったドアの衝撃音が部屋に寂しく反響した。そこに大きな怒りが込められていたのは確かで、今日私に告白と少しの暴言を贈ってくれた先輩の顔を思い浮かべた。今から煉獄が彼の元へと向かう。煉獄は友達の私に対してとても、過保護が過ぎているとおもう。良くない方向に向かい始めた状況に落胆していると、携帯が振動した。今出て行った煉獄からメッセージが届いた。『ところで付き合っている人がいるというのは本当か?』今はそのことについてはどうでも良いだろう。私は返信をせずに、煉獄のベッドに乱暴に腰を掛けて溜息を付いた。“付き合っている人がいる”というのは、私の定番の断り文句だ。



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