煉獄さんは、私の食事速度が遅いと思っているみたいですが、それは結構、間違っています。私はどちらかと言えば早食いの部類です。ですが煉獄さんと食事を共にする際には私の状態は通常では無くなるのです。どうしてかと言いますと、第一に煉獄さんと一緒に食事をするという行為の目的が食事では無くなっているからです。ではなんだと言いますと、煉獄さんが口いっぱいにご飯を掻っ込んでいるという愛らしい状態を視界に捉えて堪能するためです。言い方が気持ち悪かったかもしれません。貴方が気持ちの良い飯の食べ方をするのでついつい眺めていたくなるという話です。そういう訳で私は自ずと箸を動かすペースが遅くなります。貴方は今、3杯目の特上鰻を、今日初めての一口目なのかと錯覚する程の勢いと幸福感をもって口に運んでいます。箸の持ち方が綺麗で、なにか、その類の見本でも見ているかのようです。刀を握っている煉獄さんも好きですが、私はそうやって幸せそうに口の中をいっぱいにしている貴方の方が好きです。そうして私は、また今日も目の前に広がっている煉獄さんを捉えるのに必死で、何一つ取りこぼしてやるものかと必死で、何も喋れてはいません。貴方の顔を見て溢れ出た私の幸せの部分が、私の鰻重にふわりと乗って、それを大事に掬って食べます。そうすると煉獄さんの姿をいつまでも、仕草一つ残らず覚えていられるような気がするのです。

「名前、頬に米粒が付いているぞ」
「どこですか」
「取ってやるから少し近付いてくれないか」



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