蘇芳の赤を爪に乗せて、たぶんそのようにしてもあまり変わらない硬化時間を費やすために、手を宙にぱたぱたと振った。それがきっと手招きに見えた煉獄は、わたしの正面で足を止め待機する。

「別に呼んでないんだ。ごめん」

ちら、と手の甲を彼の方に翻して、爪の先の、まだ濡れているみたいに光ってる赤を見せつける。ほんの少し唇の間に隙間を空けて答えた煉獄は、その割れ目から温い風を、私の指先に吐いた。

「放っておくのがいちばん」

私は煉獄の首にそうっと腕を回して、そして出来る限りに注意して、彼の髪にネイルの塗料が移らないよう抱きしめた。でも煉獄の髪の端はそのような色をしているから、ちょっと爪がその毛先に触ってしまっても、バレないだろうなとも思う。



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