暗い部屋に連れて行かれて、目が暗闇に順応する前に煉獄に抱きしめられてしまった。予測出来ない展開が私の脳を鈍らせた。なにより好きな男に体を包まれたときめきが勝った。包まれた中で、私は静かに息を吐いた。肺の空気が無くなったせいで、自分の身体が幾分か薄っぺらくなってしまった気がした。

「どうしたの」
「君が可愛らしかったのでつい」
「私は今日、可愛いの?」
「いや、俺の眼に触れるとき常に君はそうだ」
「私は常に、可愛いの?」
「そうだな」
「わたしはつねにかわいい」
「ああ」

文字の形一文字ずつを、確認していく様に発音して繋げていた。煉獄は常に私が可愛いという理由で通常では中々起きない甘え方をしている。私は煉獄の背中に腕を回した。両側から腕を回して進んで行くと、指先同士が巡り合ったのできつく絡ませて結んだ。煉獄の髪からは、煉獄でない別の何かの血液の香りがした。そうして腕の中に出来た輪をできるだけ小さなものにした。煉獄の身体が私にぴったりと密着した。二人の間に介在する衣服は健全と温かみを持って、私達の抱擁をこっそりと彩っていた。



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