煉獄と顔を合わせることになったので、私はどきどきしながらこの時の為にと準備していた紅を懐から取り出し、唇の上にのせた。手鏡で、輪郭をはみ出さないように充分慎重に確認しながら、薬指で丁寧に塗りんこんだ。つやっと輝いて光の環をのせた私のそこは綺麗で、色っぽくて、もう、実質、顔面で煉獄に告白しちゃっているようなものだった。あなたの為に飾ってみました、だから、あなたが乱してくれても良いんですよ。てなふうに。

「名前、その紅の色、君に合っていないように見えるが」

淡い期待を水の泡に。煉獄は私の唇に、なんと親指をのせて紅を攫った。本当はその瞬間に持って行かれるはずだった私のこころはしっかりと私の胸中に留まって、置き去りだ。



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