普段きちんと光の玉を眼の中に持っている煉獄に、今日はそれが見当たらなかった。私はそのことについて考えを巡らせて、彼を観察した。若草色の求肥を口に運びながら。私はこの餅をたのしみに餡蜜を注文した。隣に座る煉獄はしらたまを一粒、ゆっくりとスプーンに乗せて己の口へ持っていった。やはりおかしい。いつもならそのしらたまの方が煉獄の口へ進んで飛び込んでいるのかという食べ方をするくせに。彼の器にまだ残っている桜色の求肥をこっそり奪った。食い意地を張った私の行動には気が付いていないようだった。

「あ」
「……」
「眠いんですか?煉獄」
「…?」
「いや、いつもより瞼が下りている様な気がして」
「あ、ああ…すまない、眠いわけでは、ない」
「……」
「……」
「え?」
「…?」
「ちょっと待って、ヘンすぎませんか?様子」
「そうだろうか」
「そうでしょ…」
「…むう。実を言うとな名前」
「はい」
「君、先程の道すがら知り合いの隊士とばったり会ったろう」
「ああ、はい。あの人私の同期ですよ」
「男だった」
「男です」
「彼は別れ際君の頭に手をやった」
「いつものことですよ」
「いつもなのか」
「そうですよ」
「うーーん……」
「え?」
「悪いが、暫く放っておいてくれないか」
「ええ?」

睡魔は無いと言っておきながら、煉獄は目を閉じてしまった。眉間には皺が寄っていて、なにかに悩んでいるふうにも見えた。今一緒に居るのは彼の提案なのに放っておけとはなんだと思った。私は、再び彼のあんみつの器を覗いた。よくみるとまだ求肥がいっこ隠れていて、それは綺麗な色で、真っ白な砂糖にお化粧されていた。



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