煉獄は私にチョコレートドロップスの缶を寄越した。おれんじ色を基調とした缶の中央には、茶色の貝殻が描かれてあった。「いつも君のを貰ってばかりだからな」でも普段私の懐に忍ばせてあるドロップスの缶はこれではなくて、果物味のやつだ。たまに乳白色の薄荷が紛れ込んでいて、私はそれが嫌いなので煉獄にあげるのだ。硬く押し込まれた栓が開かなくて、ポケットにあった銭で持ち上げた。缶を逆さまにして掌にドロップを乗せた。からころ。出てきた粒は宝石のような形に整えられていて、ああ、缶に描かれていたのは貝殻では無くてこのチョコレートドロップのすがただったのだなと思った。口に含む。

「チョコっていうかココアみたいな味だね」
「そうかもしれない」
「でも私、いつものフルーツ味の方が良かったな」
「それは俺が好きなんだ」
「チョコレートドロップ?」
「ああ」
「ふーん。私達って好み合わないね」

缶は煉獄に返した。彼は受け取って、私とその飴が閉じ込められたアルミ缶を交互に見つめてから懐へしまった。私にだけくれて、自分は舐めないらしい。

「美味いか?」
「だから、うまくないって言ってんじゃん」

重すぎる甘みが溶けて溶けて、口内を沼みたいに怠くした。煉獄は腕を組んで、ほんのすこし口角を上げていた。私は口の中に親指と人差し指を突っ込んで、装飾的な鈍角が消えたドロップを取り出した。己の唾液で光っていた。

「もういらない。煉獄にあげる」



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