「会えない時間が会えた時の喜びを大きくする、と『セックス・アンド・ザ・シティ2』に登場する執事も言っていましたよ。だから私も外に出た時の喜びをより良いものにするため、外出は極力控えたいと思います」

馬鹿なことを言っているが彼女は学生の身であるので、今すぐにその視線が縛られているモニター画面の電源を切らねばならない。映像はエレベーターの扉がゆっくりと開き、真っ赤な液体がこちらに向かって勢い良く流れ出してくる様を映している。朝に観るものではないような気がして、菓子類の袋が散らばっている部屋を見回した。ちかくに在るものはゴミ箱へと放った。「おい、もうそろそろ行かねば時間が…、」隅に追いやられている彼女のスクールバッグに手をかける。開いているバッグの中には、金曜日に使用した教材がそのまま入っていた。

「君は何の支度も出来ていないのか」
「宿題のプリントはやったよ」
「英語の課題は」
「えっ…エ?」
「やったのか?」
「………」
「名前」
「ホラーだ…」
「今すぐに走って登校すれば、ノートを写す時間があるな」
「………」
「どうする」
「いっ行きます、ノートを写させてください」
「仕方ない。……そのかわり、今度は映画鑑賞に俺も混ぜてくれ」
「え?」
「…駄目なのか?」
「え、いや…それだけでいいのかなと思って」
「良いだろう。早く支度を済ませるんだ」



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