杏寿郎君は字が綺麗なので、どうしたってそれに勝てそうな見込みはないので、私は彼の文に返信を書く際には聞き手と逆の手をつかって文字を書く事にしている。ついでにつむじ風が通り過ぎたみたいな文面の最後には、常に愛の言葉を一言だけ、添えるようにしている。でも杏寿郎君は私の文をいつも半分も解読できないから、告白は発見されないままだ。

「名前!最近は君のおたまじゃくしのような字も、少しは理解できるようになってきたんだ!」
「おたまじゃくし」
「ほらここ、これは時透と折り紙をやったときの話だろう?」
「ああ、そう。すごいじゃん。じゃあ何を作ったか当てられる?」
「うーん…これはき、きから始まる三文字だな」
「きつねでした」
「…そうだと思った!」

杏寿郎君、それ、そこ。君の親指が乗っているその文字。分かんないかなあ。すぐ、そこにあるのに。



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