なみだはふつう、顎の先へ、そして地面にと落ちて流れてゆくはずなのに、わたしはまぶたや多分眉毛あたりまでを涙でびちゃびちゃに濡らしていた。ようするに顔じゅうだ。

「君!こんな遅くに山の中でひとり、なにをしているんだ」
「エ…!お、お兄さんこそなんで!」
「俺のことは良いんだ、君に聞いている!」
「やっ、だって、あの!」
「む」
「ここ、ここら辺に、今月のお給料袋落としちゃったんです!わたし貧乏なのでそれがないと生活できないんです!ぜったい!」
「よく聞くんだ、この辺は夜になると…、んん?」

俺は明かりを相手のほうに近づけて驚いた。目が異様に腫れて、顔中びちゃびちゃに濡れている。「………鬼か?」声と陰から少女だと推測していたのだが。

「鬼!?そんなことを言って怖がらせるつもりです…あっ!あなた!もしかして私の給料袋の在処、知っているんじゃないでしょうね!?知っていて私を怖がらせ、追い払うつもりなんでしょう!」



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