布団のシーツを物干し竿にかけて広げていると、きゅうに不自然に捲りあがるものだから驚いた。「びっくりした…」そこから顔を見せたのは千寿郎君である。「名前さん」庭を通り過ぎて行くやわらかな風を感じている。シャボンの香りもいっぱいにした。なんだかこの場面だけを切り取ると、恋人たちの爽やかな朝の情景、といったふうだが、私と千寿郎君は恋人同士ではない。

「兄上が中々起きないので困っているんです」
「昨日はだいぶ疲れて帰ってきたもんね」

疲れて帰ってきた彼と夜、時間をかけてくっつき合ったことは、千寿郎君には秘密である。

「ええ。ですがもうそろそろ起きていただかないと。今日は刀鍛冶の方がお見えになるお約束があるんです」
「それは」

千寿郎君が手のひらを私に向けたので、タッチする形で応じた。杏寿郎君のお目覚めは私に任されたということだ。宙に浮いたままの手で軽く拳をつくってみせると、千寿郎君は口元に手を当てて笑った。可愛らしい。私はまっしろに洗濯を済まされた衣服の下を屈んで通り、草履を放って縁側に登った。ひとつぴったりと閉じられている障子に手を掛けて、ゆっくりその間に光を通す。部屋の中央に敷かれた布団は乱れている。足音を立てずに近付くと、まっすぐに閉じられた瞳をもつ彼を見つけた。



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