背中にあたたかな温度を感じて目が覚めた名前は、それが長い間自分の精神的な支えを担っていた存在、想っている男のからだである事をまず知った。心臓がどきんと一度大きく鳴って、それを感じたのは名前本人だけであったとおもうのに、すぐに背後から彼に強く包み込まれた。名前の正面に見える障子の桟のふちからは新しい朝日が零れ、床に一直線にのびていた。畳の香りはいま芽吹いたばかりの葉のように新鮮だと感じた。交わった汗のかおりは名前を置き去りにして、彼女を別の人生へと運んだ。

「お早う」

なぜ自分が一番に好きな男の体温で目覚めて、いちばんにその声が聞けてしまうのか、優しい夢なのだと疑った名前は、ゆっくりと目を閉じた。瞼のうすい皮膚を通っている血管が赤く透けていた。流れてゆく頬の涙には温度がある。



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -